産業の未来にようこそ

4IR技術に対するアラムコの取り組み


  • アラムコの3拠点(アブケイク、クライス、ウスマニヤ)は、世界経済フォーラム(WEF)グローバル・ライトハウス・ネットワークの認定施設
  • 4IR技術がもたらす産業の未来を、それら3拠点が実証

デジタルトランスフォーメーション担当バイスプレジデント、ナビル・アルヌエイム |

現在、主要な製造企業は4IR技術を活用してビジネスモデルとバリューチェーンの変革に取り組み、必然的にもたらされる財務、運営、環境面でのメリットを享受しようとしています。世界経済フォーラムのグローバル・ライトハウス・ネットワークが指し示す今後の道のりを、アラムコの最高デジタル責任者であるナビル・アルヌエイムが解説します。

第4次産業革命(4IR)技術が、現在業界にもたらしている変化を説明することは困難です。文字どおり私たちの働き方を変革しつつあると同時に、新しい、これまで想像もできなかったことを可能にしつつあります。エネルギー産業では、機械学習、ビッグデータおよび分析、そして無人航空機などのデジタルイノベーションが、効率や安全性の飛躍的な進歩の達成、CO2排出量の削減、価値の実現に役立っています。

シミュレーションマシンで働く従業員

グローバル・ライトハウス・ネットワークとは、インダストリー4.0を大規模に実施する際の指針として、世界経済フォーラム(WEF)が認定した産業立地群です。このネットワークによって今後の道のりに光が当てられ、他の企業は刺激を受けて後に続こうとします。

道を切り開く

アラムコの3拠点がこのネットワークの一角として認定されていることは、私たちの誇りです。直近で認定を受けたアブケイクは当社最大の石油処理施設、かつ世界最大の原油安定化プラントであり、世界最大のインテリジェント油田であるクライス、そしてウスマニヤ・ガスプラントの仲間入りを果たしました。当社は現在でも複数の施設が認定を受けている唯一の大手国際エネルギー企業です。これはアラムコの4IR技術への取り組みの証であり、現在推し進めているデジタルトランスフォーメーションの規模を物語っていると言えるでしょう。 

アラムコの脈打つ心臓部として、アブケイクは日々の業務で極めて重要な役割を果たしています。

施設では、サウジアラビアにおける1日あたりの石油生産量の50パーセントが安定化されています。国内全土の油田から集められたさまざまなグレードの原油が処理され、輸送、輸出およびダウンストリーム処理に向けた準備が行われているのです。施設のデジタルトランスフォーメーションにおいては、70年以上操業を続けているアブケイクの規模と設備年齢ならではのユニークな課題がいくつも生じました。しかし、データや分析、自動化の力を駆使することでアブケイクの製造プロセスが変革され、デジタル化が進む世界での革新と発展が可能になったのです。 

「データや分析、自動化の力を駆使することでアブケイクの製造プロセスが変革されました」


目覚ましい効果

アラムコはすでにその成果を刈り取りつつあります。石油1バレルの処理に使用されるエネルギーが14.5パーセント、温室効果ガス排出量が3.8パーセントが削減され、計画外のメンテナンスが20パーセント減少したのです。

「計画外のメンテナンスが20パーセント減小し、温室効果ガス排出量が3.8パーセント削減されました」

こうした成果はどのように達成されたのでしょうか?デジタルトランスフォーメーションはアブケイクにおける操業のほぼすべての面に影響を与えていますが、特に3つの変化が突出しています。

まず、カメラと熱探知カメラとガス検知器を備えたロボットおよびスマートドローンを利用することで、マニュアルでの油田検査への依存度が下がり、効率、安全性、運用チームによる意思決定の改善につながりました。(事実、今では定常操作チェックリストの30パーセントをロボットとドローンがこなしています。)

4IRセンターのドローン

次に、機械学習とAI利用アルゴリズムの導入により、石油安定化プロセスの継続的かつ先を見越したデジタル調整が可能になりました。その結果、パフォーマンスが最適化され製品の一貫性が向上したことで、発電性能が2019年から4.5パーセント上昇し、これが最終的にローカルグリッドに供給され、CO2排出量が削減されました。

最後に、データや分析、予測モデリングのおかげで、エンジニアがさまざまな問題や起こり得るシステム障害をより効果的に予期できるようになりました。これもパフォーマンスと効率の向上に結びついています。一例を挙げると、このようなデータに基づくアプローチにより、プラントで発生するフレアガスが2019年から3.6パーセント削減されました。

OSPASセンターで働く職員

才能を解き放つ

4IR技術の導入は、今ある職業にとって脅威になると誤解されている方がいらっしゃるかもしれません。アラムコでは、従業員が日常業務や危険を伴う役割から解放され、彼らが知識を広げて現在のスキルをさらに強化できる非常に大きなチャンスだととらえています。例えば、当社の安全検査員は現在、ドローンのパイロットやプログラマーとして再訓練を受け、新しいルートをプログラムし、必要な場合にはドローンを操縦する能力を身に付けられます。さらに、長年の経験を活かして、より安全で効率的な手法で集められたデータの中から潜在的な障害を見抜くことができるのです。

「当社の安全検査員は現在、ドローンのパイロットやプログラマーとして再訓練を受け、長年の経験を活かして、潜在的な障害を見抜くことができるのです」

この規模のデジタルトランスフォーメーションを成功裏に実施するには、教育とトレーニング分野での幅広いコミットメントが求められます。アラムコは数々のイニシアチブを通じてこれを果たしてきました。その取り組みには、4IR技術を十分に活用するための知識とスキルを従業員に提供する社内トレーニングや、世界的機関での社外講座を通じたスキル開発(4IRを専門とする修士号取得の支援など)が含まれます。

 

アラムコは地元の大学と、共同研究やその他のプログラムでも提携しています。さらに、全社をサポートする4IRセンターに加え、アブケイクの施設にも専用の4IRセンターを開設しました。各学術分野と各部門の知識の共有をいっそう促進し、4IRがもたらすチャンスを最大限に活用します。このように従業員が必要なスキルを確実に身に付けられるように注力すると同時に、これらのスキルは長期的に磨いていく必要があることも認識しています。

勤務中のラボ技術者

アブケイクがアラムコで3番目のグローバル・ライトハウス・ネットワーク施設として選ばれたことは、4IR技術の活用に向けた当社の多大な努力と企業戦略の証です。この新技術が私たちにもたらした成果、そして新技術によってイノベーションとクリエイティビティの精神がいかに解き放たれたかという点に、私たちは胸を躍らせています。サステナブルな方法で、より少ないエネルギーでより多くを達成できるように、今後も引き続き改善と進化を続ける必要があることを確信しています。