循環型炭素経済

地球環境

エネルギー需要が変化している世界の中で、エネルギー界をけん引する当社は、効果的なエネルギーソリューションの開拓を自らの役割として取り組んでいます。循環型炭素経済とは、サステナブルな未来への道しるべとなる実用的なコンセプトです。


循環型炭素経済とは

炭素は、一世紀以上にわたってエネルギーシステムの主要な構成要素であり、経済発展を可能にしてきました。しかし、世界でCO2排出量削減へのソリューションを求める気運が高まるにつれ、循環型炭素経済という概念が注目されるようになりました。この概念は4つの「R」、Reduce(削減)、Reuse(再利用)、Recycle(リサイクル)、Remove(除去)を包含し、人と地球とのバランスを取り戻し、炭素循環を調和するという考え方です。

地球は何十億年もの間、大気、海洋、そして陸上の各生態系の間で、自然で安定した炭素循環のバランスを保ってきました。最近まで、人々はこのサイクルの中でシンプルな役割を担い、地中から炭素を抽出し、大気中へ放出するという直線的な流れを採用してきました。しかし、地球の自然なプロセスを模倣することで、省エネや再生可能エネルギーの利用による排出量削減のみならず、排出CO2を完全に再利用・除去することで循環システムを実現し、同じようなバランスを達成することができます。

炭素は、経済やリヤドなどの都市の繁栄を可能にしてきました。

4つの「R」

削減 (Reduce)
省エネ技術は、大気中に排出されるCO2を削減することができ、一方、CO2を排出しない再生可能エネルギーや原子力も、その一端を担います。
再利用 (Reuse)
革新的技術によりCO2を回収することで、別の有益な製品の生産への活用や、油層やガス層への注入による生産性向上を実現します。
リサイクル (Recycle)
CO2を化学変換し、肥料やセメントなどの新たな製品に、あるいは合成燃料など他のエネルギーへと転換します。
除去 (Remove)
大気からCO2を除去する方法として、直接空気回収・隔離といった工学によるものと、マングローブ林など吸収源による自然の働きによるものがあります。

サウジアラムコのR&Dセンターの科学者。優秀な研究者たちが効果的なカーボンマネジメントのソリューションを探求しています。

サウジアラムコの取り組みとは

サウジアラムコは、循環型炭素経済が、安定した経済成長を確かなものとする一方で、世界規模でのCO2排出量削減に最大のインパクトをもたらす最良の枠組みであると考えます。

この枠組みに向かって数々のイニシアチブに取り組む中で、手ごろな価格のエネルギーのより安定的な供給、CO2排出量の削減燃料効率の向上、節水、より環境に配慮した市販製品のための次世代素材の開発などを実現するテクノロジーソリューションを展開してきました。

また、人工知能やビッグデータなどの第四次産業革命(4IR)テクノロジーを活用し、社内エネルギー消費量の監視やオペレーションの最適化、地震データ処理・解析の向上、原油回収方法の最適化、そして油層の生産性強化を図っています。当社のアップストリーム事業のCO2排出原単位は、すでに業界で最も低い水準にありますが、今後も事業活動による環境負荷を最小化するために、効果的なカーボンマネジメントソリューションのイノベーションと探求を継続していきます。


削減(Reduce):ルーティンフレアリングをゼロに

ガスフレアリングとは、石油生産時に生じる随伴ガスの燃焼を指し、不経済でCO2排出につながります。サウジアラムコは、ガスフレアリング削減の長きにわたるパイオニアとして、1970年代のマスター・ガス・システムを皮切りに、フレアリング最小化プログラムにおける4IRテクノロジーの開発と展開を継続してきました。その取り組みは、かつて無駄にしていたエネルギー資源の回収・再利用にとどまらず、CO2排出量の大幅な削減につながっています。これは、ルーティンフレアリングを2030年までにゼロにすることを目指す、現在進行中のコミットメントの一環であり、世界銀行が提唱する「気候変動アクションプラン2016-2020」に歩調を合わせています。

当社は、フレアリング最小化プログラムの一環として、サファニヤのオフショア油田などの施設に、複合型フレアガス回収システムを導入しました。
ハウィヤガスプラントには、4,500万標準立方フィートのCO2を回収、処理する能力が備わっています。

再利用(Reuse):石油増進回収(EOR)

EORとは、回収されたCO2などの物質を油層に注入し、生産性を高めるプロセスです。ハウィヤガスプラントは、4,500万標準立方フィートものCO2を回収・処理する能力を備え、そのCO2は85km離れた中東最大のCO2 EORの拠点であるウスマニヤ油田へ送られ、そこで油層へ注入されます。これにより、CO2排出量削減とともに、石油回収の増進を実現します。

リサイクル(Recycle):節水

サウジアラビアは、川がなく、降水量も低く、夏の気温も高い国です。

水を大切にすることは、私たちのDNAの中にあります。

アラムコは、ベストプラクティスとテクノロジーを駆使し、排水を最大限に活用し、海水、下水処理排水、リジェクト処理水などの代替水資源を利用しています。
また、再生可能エネルギーを使用することで、より持続的に水処理・送水システムを稼働させています。

海水を使用し石油の回収率を高め、水資源の保全に貢献しています。1979年、クレイヤ海水処理場の制御室で海水の処理と輸送をモニタリングしているオペレーター。
マングローブは、気候問題に関わるCO2削減において最も効果的な自然のソリューションの一つとして知られています。地上および地下の両方で炭素を吸収・貯蔵するため、海洋炭素吸収源、すなわちブルーカーボンも形成します。

除去(Remove):マングローブの植林

アラムコは、CO2回収・利用・貯蔵に関わる数多くのテクノロジー開発に取り組み、CO2を回収し地層に隔離することで大気中への放出を防いでいます。さらに、地球の天然炭素吸収源を活用する数々の取り組みへの投資も行っています。たとえば、炭素の隔離において、マングローブ林は、陸上の森林に比べ最大100倍の速さとより優れた永続性をもち、重要な役割を果たします。私たちはマングローブイニシアチブを通して、これまで200万本以上のマングローブを国内に植樹しました。これによりCO2の除去と、危機に瀕する生物多様性の保全に努めています。


地球規模の対話

「21世紀の機会をすべての人のために実現する」をテーマに、サウジアラビアが議長国を務めるG20では、地球環境保護を主な目的の一つとし、その中で、地球の炭素循環のバランス回復を促す基盤として循環型炭素経済を位置づけています。このことは、2020年2月にリヤドで開催された第1回CO2回収・有効利用・貯留国際会議(iCCUS)において強調されました。この場では、サウジアラムコの社長兼CEOアミン・ナセルや最高技術責任者アハマッド・O. アルコウェイターなど、石油・ガス産業界の権威あるリーダーたちが、高まる世界のエネルギー需要に対し、安定的かつ持続可能なあり方で応えていくという二重の難題について議論しました。

さらに、サウアラムコは石油・ガス気候変動イニシアチブ(OGCI)の創設メンバーとして、世界有数のエネルギー企業と提携し、気候変動に立ち向かう実用的なソリューションに取り組んでいます。各々の専門知識を結集・活用して共有インフラや事業運営をサポートし、低コストのCCUSを実現することで、世界全体でCCUS産業に勢いをつけることが狙いです。