- 原油アッセイは広範な化学分析評価
- 複雑な化学成分を把握し、環境問題の発生を防ぐ
- アラビア原油は、API比重が高く、上流事業炭素強度が低いという優れた特徴を備える
原油の魅力に迫る
アラムコの原油アッセイの特性とは
原油サンプルに一つとして同じものはありません。砂粒一つ一つが異なるように、原油も油種ごとに化学的・分子的特性が異なります。
砂漠の風が砂丘を動かし形づくるように、石油やガスの貯留層では、流体の組成が衝動的に変化します。石油の激しい変化の謎を解き明かすプロセスを「原油アッセイ」と呼びます。
知識に基づき環境問題を防ぐ
原油アッセイとは、石油試験所が行う原油の化学的評価です。原油の繊細な特性を理解することで、得率や品質、そしてなにより環境に関わる問題を未然に防ぐことができます。
アッセイは、原油の精製や取引、生産事業者に、炭化水素の詳細な解析を示します。そのデータは、ある原油が特定の製油所に適しているかどうかを精製企業が判断するのに役立ちます。
生産段階にある炭化水素は不安定な状態にあります。原油の組成を詳細に把握することは、石油・ガス生産のバリューチェーンを維持するうえで基盤となる作業でもあります。
炭化水素は、ある日はスイートだったり（硫黄分が低かったり）、次の日には硫黄分が高くサワーだったりすることもあります。また、乳化してパイプラインの流れを妨げてしまうこともあります。
原油の秘密を解明する
何十年間にもわたり、アラムコの科学試験所では、アラビア原油の奥深い謎に対する精密な究明を行ってきました。ダーラン本社の研究開発センターには、約6週間に1度、当社が管理する油層のいずれかで採取された15リットルの原油サンプルが届けられます。
センターでは、テクニカルサービス部門（TSD）の科学者たちがこの光沢のある液体の興味深い特性を検証します。テストは2階の蒸留試験室で始まりますが、そこでは原油が分留装置に投入されます。装置は処理精製設備のミニチュアのようなものです。
重力や加熱、冷却などの手法を駆使した分留装置により、この流動的原油はさまざまな炭化水素製品に慎重に分離されます。これを留分と呼び、ガソリンや軽油、灯油、アスファルトなどを含む最大13の留分に分けることができます。
アラビア原油を世界に向けてマーケティング
蒸留試験室に隣接する長い廊下のドアのハンドルを回すと、それぞれのドアの後ろには、各留分をテストするために設けられた立派な専用試験室があります。すべての試験室では、一つの留分について、独自の分子的、物理的、化学的特性を広範な方法で分析します。
これらの試験結果を総合したものが、原油を世界市場に送り出す上で重要となる、複雑な化学分析評価、すなわちサウジアラムコの総合的な原油アッセイとなります。「それぞれの原油の分析評価データは、その精製プロセスを決定するうえで重要です」と語るTSDの原油・製品特性判定ユニットのスーパーバイザー、アマーニー H. ムシャーラーは、アッセイのデータが各原油の利用のありかたを決定づけると説明します。
「その製油所に適合しない原油を処理すると、生産、品質、環境問題を引き起こす可能性があります」
アラムコ原油・製品特性判定ユニットスーパーバイザー アマーニー H. ムシャーラー
顧客の発注を受けて提供するものは、その顧客のニーズを満たすものでなければならないとムシャーラーは述べています。
上流事業の低い炭素強度
1933年設立以来の歴史あるアラムコは、世界最大級のエネルギー・化学企業です。その上流事業はサウジアラビアを拠点に展開されています。
国内には、少数ながら大規模で生産性の高い油層が点在し、これらのバレルあたりガスフレアリング率は低く、また油中水分も少量です。そのため、掘削量に対する生産効率が高く、より少ないエネルギーで原油の分離、取扱、処理、再注入が行えます。
このおかげで、アラムコは上流事業において業界トップレベルの低炭素強度を実現しています。2020年、当社の国内完全所有・運営アセットによる上流事業炭素強度は、石油換算1バレルあたり二酸化炭素換算10.5kgでした。
数字で見るアラムコ2020年実績
原油生産量
日量920万バレル
採掘権に基づく炭化水素埋蔵量
2,552億石油換算バレル
低い上流事業炭素強度
10.5CO2換算kg／石油換算バレル
アラビア原油5油種
サウジアラムコは、アラビアン・ヘビー、アラビアン・ミディアム、アラビアン・ライト、アラビアン・エクストラライト、そしてアラビアン・スーパーライトという、世界最高品質の原油を生産しています。すべてアラビア原油は、これらのブレンド品を含め、世界中の殆どの製油所で精製することができます。
アラビア原油は、API比重が高く、かつ上流事業炭素強度が低い、非常に優れたものです。
比重は、原油の市場価値を左右する最も重要な要素です。
API比重が高い、つまり軽質原油であるほど、利益率の高い製品をより多く生産できるため、価値が高くなります。
アラビアン・スーパーライト、アラビアン・エクストラライト、そしてアラビアン・ライトが、当社の2020年原油総生産量の約69%を占めており、「ライト」系が主要油種となっています。