若者が担うサウジアラビアの未来

若い世代が来たる飛躍的経済成長を支える


  • サウジアラビアの若年層人口は20%以上増加する見込み
  • 国内経済の変革に向けて、教育と専門的訓練を「ビジョン2030」の柱に据える
  • サウジアラムコは、1940年代より24万人以上の国民の潜在能力開発に貢献

Noor R Algadheb |

サウジアラビアは、若者の多い国です。人口3,400万人のうち半数以上が30歳未満、人口増加率は2.52%で、2030年までには世界で最も平均年齢の低い国の一つになります。

若い世代への適切な投資は、国の経済成長や発展の力となります。それは、より高い生産性・起業家精神・イノベーション、技術的進歩、優秀な人材を呼び込む高い所得といったことを意味します。同様に、歴史的に商業、文化、教育の中心であったサウジアラビアの砂漠から浮き上がってくる、若者たちという新しい力を意味します。

15-24歳世代人口増加率予想(2020年から2030年)

33.6%
ナイジェリア
25.2%
サウジアラビア
15.5%
南アフリカ 
6.8%
スペイン
3.4%
ペルー 

ビジョン2030と未来の巣立ち

サウジアラビア経済において、若手労働者の増加は「人口ボーナス」、つまり住民年齢構成の変化がもたらす潜在経済成長力という新たな機会を意味します。

サウジアラビアの意欲的な経済改革計画「ビジョン2030」は、国内経済の多様化を進め、さらに保健、教育、インフラ整備、福祉、観光など公共サービスの拡充を目指す、変革への壮大な道のりです。ビジョン2030の中核となるのは、今日の知識ベースのグローバル経済に通用する、しっかりと教育・鍛錬された人材の開発です。

サウジアラムコの地質技術部門の仕事について説明する地質研究者アブラル・アバッド。子供たちの科学、技術、エンジニアリング、数学分野への好奇心をかき立てます。

世界最大の経済国の一つであるサウジアラビアは、教育に重点的な投資を行ってきました。サウジアラビア政府は1927年より、海外で高等教育を受けようとする国民に資金援助を行っています。2005年から2015年にはスポンサーによる奨学金が急増し、2020年には文化・芸術分野の学位取得を目指す学生にも門戸が開かれました。

政府による教育投資と並行して、サウジアラムコも1940年代から訓練・能力開発プログラムを実施しています。サウジアラビアの若者たちへ十分な教育機会を提供するという、この素晴らしい取り組みを、当社は今後も継続していきます。


80年にわたる力ある教育の実績

教育は国家発展の力強いツールです。サウジアラビアで初めて商用利用可能な油田が発見された1940年代に、サウジアラムコはサウジアラビア人材への教育と訓練のため、数百万ドルにのぼる投資を開始しました。

1944年、東部州アル・コバールにあるサウジアラビア初の商用油井の近くに英語教育の学校を創立しました。1956年には、高校科学で優秀な成績を収めた卒業生への奨学金制度を設け、これまでに8,600名以上のサウジアラビアの学生が、国内外の大学で学士号を取得しました。

さらに当社は、成績優秀者と才能ある人材に対して、修士課程や博士課程へと進むためのサポートも行っています。1976年以降、2,500名以上の社員が上級学位を取得しています。

この取り組みは大学教育にとどまりません。サウジアラムコではさらに、技術・産業・通信分野の専門学校やコミュニティカレッジ、行政学院などの卒業生を対象にしたディプロマコースを設け、機械操作やメンテナンス、管理、事務などの資格技能修得をサポートしています。


優れた実績を上げる

サウジアラムコは、サウジアラビアの学生向けの高校教育プログラムを数多く提供しています。これらは、とりわけSTEM分野における学力および分析的思考力の向上を目的としています。当社の従業員に占める35歳未満の割合が非常に高いことから、こうした若手人材育成への投資は今後も継続されます。プログラムの一つである「若手リーダー諮問委員会(YLAB)」は、若者たちがサウジアラムコの戦略やイノベーション、人材と方針、訓練と能力開発などに関して提案を行い、変化を与える機会となっています。

サウジアラムコ社員の70%は、石油・ガス施設での運営や作業に従事しています。こうした状況を鑑み、当社の最も重要な教育イニシアチブとして、リヤド、ジェッダ、東部州など全国6ヶ所に職業訓練センターを設けています。当社の事業は、探鉱・プラント運営から製品輸送にいたるまで多岐にわたり、サウジアラムコの広大な石油・ガス田と同様に幅広い分野の能力が必要とされます。

当社の産業訓練センターでは、過去20年間で延べ44,000名以上がプログラムを修了しています。さらに、産業技能認定証を授与された人は1997年以降で162,000名近くにのぼります。

2019年には、サウジアラムコのサプライヤーによるサウジアラビア人雇用率が51.4%まで増加しました。サウジアラビア技術職業訓練公社とのパートナーシップのもと、19の専門センターの設立を支援しました。これらの施設では、掘削、石油・ガスプラント運営、電力システム、メンテナンス、建設、検査、海洋など35以上の分野の訓練を提供し、これまでに23,000名以上のサウジアラビア人が、プログラムを修了しています。


アブドラ国王科学技術大学(KAUST)での2016年度卒業式。KAUSTは2009年にサウジアラビアのツワルに創立された研究大学で、大学のほかに大学院、専門研究部門を設けています。

知識ベースの経済変革

国連「持続可能な開発目標(SDGs)」の目標4に質の高い教育が掲げられているように、教育と経済発展には強い相関関係があります。そして、国連万人のための教育(EFA: Education for All)グローバルモニタリングレポート2012によると、国が子供の教育に1ドルの支出を行う毎に、その子供は将来現役で働く期間に10ドルの経済成長をもたらすとされています。人材開発は経済生産性を向上させるのです。

例えば、サウジアラビア政府は人材開発に投資することで、対内投資の効果を高めています。それは、サルマン国王国際海洋産業・サービス・コンプレックスや、サルマン国王エナジーパーク(SPARK)などの超巨大プロジェクトで証明されています。しっかりと訓練された優秀な専門スタッフを何千人も確保するために、SPARKでは10の専門訓練センターを設立する予定で、パーク内テナントの高まる労働力ニーズに応えていきます。米国のシリコンバレーのように、SPARKは高度な技能者集団として認知されつつあり、関連ビジネスの同地域への集積を呼んでいます。

結論づければ、知識ベースの経済を構築するカギとなるのは、国民の教育、技能、そして知能です。サウジアラビアで最も厚い層の若者世代に力を注ぎ、投資をすることで、いにしえの交易の要所、そして産油国としての地位からさらなる高みを目指すのです。