パイプラインを超えて

非金属素材が石油・ガス産業にとって21世紀のソリューションである理由とは

  • 非金属素材によるソリューションが、事業活動の多角化とサステナビリティを促進し、世界中のエネルギー産業に恩恵をもたらす
  • その効果は、建築・建設、自動車、包装、再生可能エネルギー、石油・ガスなどの産業に及ぶ
  • サウジアラムコは、非金属素材の世界規模での活用を推進し、関連技術の進歩を図るため、非金属技術革新センターを開設
Rebecca Wallace |

原油が地表面に汲み出されてから、燃料や様々な石油製品として消費されるまでに、石油やガス液は、製油所や流通施設をつなぐ陸上および海底パイプラインを通過します。炭化水素が貯蔵されているか輸送されているかに関わりなく、この高度に統合されたグリッドは革新的な手法と最新技術に支えられ、安全で効率的、かつサステナブルな形で、必要とされる場所にエネルギーを供給します。

世界で最も信頼のおけるエネルギーサプライヤーとして、サウジアラムコは、数千平方キロメートルの地域に及ぶ自社パイプライン・ネットワークに、業界基準となる信頼性を確立しなければなりません。こうした重要インフラには、腐食や漏洩などの潜在的な問題を軽減し、保守整備がしやすく、長期的コストを抑えられる素材が求められます。

この探求をきっかけにサウジアラムコは、世界中のエネルギー産業や製造業界のために素材のイノベーションに着手すると同時に、私たち自身の手にある石油を原料とする化学品の製造にも乗りだしました。その結果、パイプそのものは多くの可能性のひとつに過ぎないことがわかったのです。

ここからは、サウジアラムコの非金属素材への道のりをご紹介しましょう。


合理的な道筋

総合エネルギー・化学企業であるサウジアラムコにとって、非金属素材分野への参入は理にかなった歩みです。このグローバルな産業で私たちが担う役割、そして当社のパイプラインと施設のネットワークの規模・範囲を踏まえ、事業の主要構成要素が過酷な腐食性環境に十二分に耐えられるよう、研究とイノベーションが必要とされています。

グローバルな石油・ガス業界でサウジアラムコが担う役割、そして当社のパイプライン・施設ネットワークの規模・範囲は、非金属素材分野への挑戦が合理的な歩みであることを示しています。

パイプライン網は安全を考慮し構築されていますが、腐食は金属使用の自然な結果であり、モニタリングと管理が欠かせません。世界各地の様々な産業では、腐食の防止、設備の保守や修繕に毎年何十億ドルものコストがかかることから、腐食は「見えない敵」と呼ばれています。石油・ガス産業だけで、腐食対策費用が600億ドル以上とも言われています。金属が徐々に自然な状態に戻ろうとすることとの戦いは、私たちのセクターにとり非常に重要です。構成要素の障害は、事業中断による多大な損害だけでなく、環境への重大な影響をももたらすためです。

石油産業とその彼方に向け、一連の先端高分子溶液(先端ポリマーソリューション)開発を進めるという決定は、サウジアラムコの戦略的目標である炭化水素から最大限の価値を引き出し、新たな代替活用を取り入れるという考えと合致しています。そしてもちろん、サウジアラムコの象徴である技術やイノベーションへの注力とも調和しています。


卓越した技術を積極的に導入

非金属素材について厳格な耐熱・耐圧条件を満たす現場実証済みソリューションを開発するため、サウジアラムコは溶接技術研究所およびアブダビ国営石油会社と協働し、英国ケンブリッジに非金属技術革新センター(NIC)を開設しました。NICでは、学術界、石油・ガス企業、複合材料メーカー、各種研究機関などから集結したパートナーが、スピーディな製品開発、試験、実用化に取り組んでいます。

 

クライス・メガプロジェクトでは、全長400キロメートルにおよぶ非金属製フローラインが設置され、非金属素材の活用を新たなレベルに引き上げました。

業界における非金属素材のニーズは高まりつつありますが、わたしたちの調査の結果、現在利用可能な素材の技術的制約が障壁となり、市場への浸透が進んでいないことがわかりました。適切な非腐食性代替素材を使用することで、耐熱や耐圧、化学的適合性の問題への対処が可能となり、ひいては石油やガス生産における安全性と環境性能の向上につながることは明白です。卓越した技術の中心を担うNICでは、適切な先進的性能や特徴を備えた製品の試験と開発促進が可能であり、さらには、顧客が抱える技術面での優先事項に対してともに取り組むことも可能です。

サウジアラムコ自身の非金属素材利用は今に始まったことではありません。当社の石油・ガス関連施設の大半で、非金属パイプを使用しています。また、プラントのほとんどの用役利用においては標準採用されています。

しかし、その素材の活用を新たなレベルに引き上げたのは、当社のクライス・メガプロジェクトで新規に開発された油田増強で行われた、強化熱可塑性プラスチックパイプ(RTP)の初の大規模導入でした。サウジアラムコの厳格な規準を満たすよう、実験室および現場での集中的な試験を重ねたのち、標準的な炭素鋼製パイプラインに相当する全長400キロメートルの非金属製フローラインが設置されました。

腐食のモニタリングコストが不要になったため、RTPのライフサイクルコストは、炭素鋼製パイプの3分の1と算出されました。敷設に必要な時間にも驚くべき差がみられ、炭素鋼製パイプであれば設置に通常70日かかるところ、クライスRTPフローラインの建設は2日もかからずに完了したのです。

さらには、私たちが実施した各種試験を通して、パイプの軽量化のため、搬送や施工が容易になり、溶接など一部の作業が不要になったことなど、RTPの安全面における優位性も証明されました。


非金属素材の化学

しかし、このような比較結果のみが全てを物語るわけではありません。真の飛躍的進歩は、当社が開発に取り組む非金属分野の合理化につながりうる技術にあります。

精製プロセスを介さずに、原油から直接、価値ある石油化学製品を製造するという技術革新に挑む私たちの大志は、サウジアラムコの非金属戦略に沿ったものです。原油からの化学品直接製造技術(C2C)により、サウジアラムコは、多くの事業者が素材生産に必要とする化学製品をより効率的に製造する企業として位置づけられるようになるでしょう。炭化水素の転換を推進することは、業界の様々な課題に取り組み、ソリューションの展開を加速するという技術に焦点をあてた活動の第一歩です。

当社の研究開発センターでの科学者達。非金属戦略の一環として、原油から直接、価値ある石油化学製品を製造するという技術革新によりイノベーションを推進するという目標を掲げています。

非金属素材は、建設、包装、自動車から、風力タービンなど再生可能エネルギー分野まで、効果をもたらすでしょう。

既成概念の枠を超え

非金属素材ソリューションへの戦略的フォーカスは、サウジアラムコの事業範囲を拡大しました。一連の先進素材は、包装、自動車、建築・建設をはじめとする多くの分野に、ライフサイクルコストの低減や柔軟性、耐久性をもたらし得ます。炭素繊維はすでに複数の業界で活用が進められています。自動車産業においてスチール代替となるだけでなく、その重量比強度の高さから、風力発電のタービン翼や深海油井の複合材料パイプなど、多くの用途に最適です。

サウジアラビアを非金属素材のハブにするというポジショニングのもと、サウジアラムコは現地調達の取り組みを強化し、経済多様化を目標とするサウジビジョン2030に合致した歩みを進めています。

石油・ガス産業用途の非金属素材において、より優れた信頼性、安全性、コスト管理性、総合的な一貫性のためイノベーションを行い、さらに他産業での新規活用を見出すなかで、サウジアラムコはまさにWin-Winとなる提案を生みだしています。石油へのさらなる需要を喚起し、より多くより良い製品開発のために自社リソースの革新を進め、製造業にとっての機会を創出しているのです。

これが、サウジアラムコの非金属素材ソリューションです。

本記事の内容は、「Pipeline Oil and Gas News」2019年3月号に掲載されています。