果敢に挑む新デジタル世界

人工知能から仮想現実プログラムまで、 サウジアラムコは、企業活動を一変させる技術の未来を見据える


  • デジタル化により企業活動の在り方が変容
  • サステナビリティ・効率・安全性の向上を実現
  • 革新と技術を融合するサウジアラムコ4IRセンター

Rebecca Wallace |

ウェアラブル技術、自己学習機器、油田掘削装置での実体験をシミュレーションする仮想現実プログラム。これらは、世界有数のデジタル化推進エネルギー企業を目指すサウジアラムコが展開する技術のほんの一部に過ぎません。

しかし、デジタル化は私たちにとって単なるガジェット以上の意味があります。それは、革新的技術を梃子にサステナビリティ・効率・安全性のさらなる向上を実現するチャンスです。それは、炭化水素による環境負荷を低減しつつ、世界のエネルギー需要を満たすという自らの能力変革のことを意味します。既にその成果として、業界トップ生産者の中で最も低いカーボンフットプリントを達成しています。あらゆる兆候が、完全にデジタル化された未来に向かうことを示す中、道を切り開いていきます。


サウジアラムコの浅水域検査監視ロボット(SWIM-R)は、パイプライン検査の速度、効率、安全性を向上させます。

デジタル革命

私たちは今、第4次産業革命、すなわち4IRの只中にいます。物理的領域、デジタル領域、生物学的領域の境界を曖昧にする技術的進歩の波がかつてないほど急激に押し寄せてきています。フィンテック、AI、モノのインターネット(IoT)、ブロックチェーン、量子計算など、数々の技術が、「それ以前」にはもう引き返せないほど私たちの生活に定着しつつあり、この一大変革がほぼすべての産業分野の従来の姿を壊すと言っても大げさではないでしょう。

石油・ガス分野も例外ではありません。実際、作業環境の大変革という点で、石油・ガスは長期にわたり最先端を行く産業の1つであり続けてきました。無人掘削装置の遠隔操作から、漏れを検知するドローン、水中ロボット、地下の4Dモデリングに至るまで、4IR技術の導入によって、バリュー・チェーン全体に新たなリソースと効率性がもたらされました。

 

科学者カリーマディン M. シャイクがチェックするパイロット・プラントの圧力調整バルブは、原油から直接化学品を製造する技術に用いられます。

サステナブルな革命

過去の産業革命とは異なり、私たちのイノベーションは未来を見据え、プロジェクト開始時点からサステナビリティが目標たり得るエキサイティングな取り組みです。サウジアラムコは現在、大気中から炭素を回収して隔離し、CO₂を価値ある製品へと生まれ変わらせ、輸送における排出量を削減する画期的なソリューションを推進し、原油を化学製品、または将来的に可能かつ最適なエネルギー源として水素に直接転換できる技術を探求しています。

サステナビリティは、世界最大の石油・ガス企業であるサウジアラムコの長期ビジョンに欠かせない要素です。エネルギー需要が高まり続ける中、効率性と競争力を維持し、企業活動の環境負荷を最小限に抑えつつ未来のエネルギーを届けたいという思いを、私たちは持っています。当社の油田からオフィスに至るまで、これらデジタル技術をどのように組み入れるのかが、このビジョンの要となります。

4IRにおけるリーダーシップが認められたウスマニヤ・ガス・プラント

世界経済フォーラムの認めた「ライトハウス(指針)」

ウスマニヤ・ガス・プラント(Uthamaniyah Gas Plant)」を紹介しましょう。このプラントは、世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)の「「製造業の指針(Manufacturing Lighthouse)」プログラム」において、4IRにおけるリーダーシップが認められ、石油・ガス業界では初めてWEFの認定を受けたプラントです。より効率的で安全かつ環境に優しい活動を実現した点が称賛されました。

 

同プラントで用いられた技術:

ロボット工学と無人航空機(UAV)
飛行ロボット(UAV)、水中ロボット(ROV)、地上型ロボット(クローラー)を活用し、緊急対応、検査、及びリアルタイム・データへのアクセスを実施して、診断精度の改善、安全性強化、維持管理費用の削減につなげています。
ウェアラブル技術
当社のスマート・ヘルメットを装着すると、現場技術者は情報を交換し、リアルタイムで通信・協働する力を得ます。また、彼らの視界はそのままエンジニアに生中継され、エンジニアが拡張現実技術を用いて技術者を安全に誘導することが可能となります。
アセット・パフォーマンス・マネジメント
設備資産の健全性、信頼性、完全性、戦略、安全性などのための技術で、稼働中設備の信頼性と安全性の向上に寄与します。
高度な分析
予測分析を用いてアルゴリズムを資産データに適用することで、異常をいち早く発見し、パフォーマンス低下を検知でき、潜在的な問題をユーザーに通知します。

スマート・プラントとスマート・サイト

この種の先駆的な4IR技術は、サウジアラムコのデジタル・トランスフォーメーション・プログラムによって可能となりました。同プログラムでは、業務全般に最先端デジタル技術を展開し、企業活動の在り方に変容をもたらしています。

例えば、アップストリーム部門において当社の地球科学者は、人口知能(AI)を用いて、地震探査データを解析し、掘削リスクを最小化できるスイート・スポットを特定しています。遺伝的アルゴリズムを用いて岩質を理解し分類する一助とし、不確実性を減少させ、効率的かつ正確な油層キャラクタリゼーションを実現しています。さらに、無人潜水機群の能力を結集した集合データを利用するSpiceRackと名付けられたシステムは、地震探査データ収集に関わる産業に大変革をもたらしました。

サウジアラムコが構築した核磁気共鳴ツールは、マニファ油層のリアルタイム3Dプロファイル作成を実現

油田のみならずオフィス地域においても、モノのインターネット(IoT)と高度分析を活用して、サウジアラムコのコミュニティ内に「スマート・サイト」を構築しています。これはもはや単なる未来像ではなく、急速に現実のものとなりつつあります。例えば、「統合スマート・シティ・システム」プロジェクトは、ダーラン、ラスタヌラ、ウダイリーヤ、アブケイクにあるアラムコの主要拠点を対象とするでしょう。スマート・センサーとAIを用いることで、スマート街路灯、インテリジェント・パーキング、スマート電力・水量計、統合輸送を網羅する予定です。目的とするのは、節水と省エネを行い、各コミュニティの生活の質を向上させることです。

ダーランにあるサウジアラムコ本社

アップストリームからダウンストリーム、そしてその枠にとどまることなく、これら画期的技術を最大限に活かすべく全力で取り組んでいます。そして、この革新と技術を融合するハブが、印象的かつ最先端の施設である4IRセンター(4IRC)なのです。

 


革新の指標

4IRセンターは、エネルギーの未来のために設けられた2,500㎡を超えるスペースです。全面展開に先駆け、調査を行い、アイデアを考案し、プロトタイプを作り、試験導入を実施する場です。センターの特徴である270㎡のビデオ・ウォールは、画素数の合計が1億900万を超え、複数のクラスターとゾーンに分かれています。その中には、人口知能ハブである巨大な凹面ビデオスクリーンが設置され、運用上のソリューションが20件以上表示されています。