- 接着剤は最古のDIY用品の一つ
- 当社研究者による新たなシーリング剤の開発を推進
- 業界初の水性シーリング剤の試験を実施
環境への影響を低減しつつ、坑井をシーリング
次世代の接着剤は、水道の水から作られるようになるかもしれません。サウジアラムコではすでにその開発が進められています。接着剤は歴史上最も古いDIY用品の一つです。
紀元前70,000年には、洞窟壁画の表面を密閉・保護するために、植物や動物由来の物質を混ぜて作った塗料が使われました。紀元前4000年には、壊れた陶器を元通りにするために接着剤が使われ、また古代エジプト人は家具を組み立てるのに接着剤を使用するようになりました。
2019年に時代を戻します。
今やどの学校の教室にもある接着剤は、世界最大規模の産業プロジェクトにとっても、なくてはならないものです。エネルギー産業において、接着剤の用途として特に重要なものが、坑井を取り囲むセメント部分にできた亀裂の補修です。
坑井とは、石油やガスを地表にくみ上げるために地下に掘られた細い穴、いわゆる立坑です。その外周に充填されたセメント部分はしばしばひび割れを起こします。
それを補修するために、私たちは先人と同様、接着剤を用います。
サウジアラムコでは、当社研究者による新たなシーリング剤の開発を促進し、先端科学を利用して環境への影響を低減しつつ、強度と耐久性を大幅に向上させる革新的ソリューションの創出を目指しました。
そこで、出来る限り自然なもので、生命にとっても欠かせない水に注目しました。この取り組みは当社だけにとどまりません。
エネルギー業界では、シーリング剤成分に水を使用することが長い間検討されてきました。水性のシーリング剤を使用することで、アニュラス(ケーシングとその内側のケーシングが作る環状の間隙)で事象(坑井内に生じる亀裂)が起こった際に用いる化学物質を削減または排除できる可能性があります。
当社の科学者たちは研究を重ね、水と化学を駆使して新たなシーリング剤を開発しました。2017年、サウジアラビア国内にあるサウジアラムコの油田で、業界初の水性シーリング剤であるArcResinの試験が行われ、他の市販製品をしのぐ成果を上げました。
「この次世代のシーリング剤であるArcResinの耐熱温度は、華氏350度(摂氏176度)を想定しています。これは現在の化学シーリング剤よりも大幅に高い耐熱性です」とヒューストンにあるアラムコ研究センターの掘削技術チームの科学研究員エリザベス・コントレラスは語ります。「ArcResinは深海海洋油田での作業に不可欠な高圧用途でも、より優れた性能を発揮します」
ArcResinは2018年、World Oil AwardsにおけるBest Health, Safety, Environment / Sustainable Development Offshoreのファイナリストに選ばれました。サウジアラムコはこの技術に関して複数の特許を取得しており、この次世代ArcResinをサウジアラビア国内の当社の油田で使用する計画が進められています。
エリザベス Q. コントレラスは、ヒューストンのアラムコ研究センターの科学研究員です。彼女は、サウジアラビアのダーラン本部の科学者やエンジニアとともに、ArcResinの開発に携わりました。
コントレラスは、テキサスA&M大学コーパスクリスティ校で化学の学士号を、コーネル大学で化学および化学生物学の修士号を、ライス大学で有機化学の博士号を取得しています。彼女は高校の授業で化学に興味を持ったことがきっかけで、この世界に入りました。