サウジアラムコをさらに強化するiktva: モハメド A. アルシャマリーへのインタビュー

プログラムの指揮を執る、調達・サプライチェーンマネジメント担当副社長のモハメド A. アルシャマリーがインタビューに答えました。


  •  iktvaプログラムは、サウジアラムコのすべての調達先のけん引役として、より強固な地位を確立することを目指している
  • ラス・アルケア海洋アンカープロジェクト、サルマン国王エナジーパーク、プラスケム、ジャザン経済都市がその取り組みの好例
  • アルシャマリーは、iktvaをローカリゼーションへの「総合的かつ集合的」道のりと捉える

Eamonn J. Houston |

国内産業奨励(iktva)プログラムの話になると、モハメド A. アルシャマリーの言葉に熱がこもります。iktvaは、調達・サプライチェーンマネジメント担当副社長である彼にとって情熱そのものです。

5年目を迎えたiktvaは、着実に成果を上げ、エネルギー分野においてその概念とブランドを築いてきました。ではそのiktvaプログラムとは一体何か、アルシャマリーが明確に説明します。

ローカリゼーション

「iktvaを『サウダイゼーション(サウジアラビア人雇用を推進する国家政策)』と捉える人もいますが、これはサウジダイゼーションではなくローカリゼーション(産業の現地化)です」と、サウジアラムコのダーラン本社でのインタビューで語ります。

「なぜサウジアラムコのような会社がローカライズを進めるのでしょうか?それは企業としての責任だからというだけでなく、最終的には産業の現地化が当社の強みとなるからです」

「サプライチェーンが身近にあれば、さらなる信用を得ることができます。それは国にとっても有益なことであり、また経済成長にもつながるでしょう。」

いかにiktvaがサウジアラムコの強さと能力の向上に寄与するかは、アルシャマリーにとって大きなテーマです。

「ローカリゼーションによって当社はさらに強くなり、より高い信用を得ることができるでしょう。なぜなら資材を会社のすぐ近くに持つようになるからです。より信頼されるようになるにはどうすればよいか?それには在庫を増やすことが重要です。サプライヤーと共に在庫を管理すれば、近くのサプライヤーに連絡し、必要なものをすぐに手に入れることができます」

アルシャマリーは、物資の供給元が地元市場に根ざしていれば信頼性や効率性が向上すると考えています。

「現在当社は多量の在庫を保有しています。なぜならそれらはすべて米国、アジア、およびヨーロッパから仕入れるもので、場合により到着に数か月かかることがあるからです」「ではどうすればよいのでしょうか?ローカリゼーションにより、在庫を保ちながら実際には当社の在庫は減り経済効率も上がります。一方、近隣のメーカー数を増やすことで地域経済が発展します。これこそがiktvaが目指すものなのです」

iktvaプログラムには、サプライヤーの地域市場での支出に基づいてスコアリングをするという特徴があります。

「支出のうち50%を国内で調達すれば高く評価されます。サウジアラビア人労働者にどれだけの給与または報酬が支払われたかも考慮されます」とアルシャマリーは説明します。

「当社は数値目標をパーセンテージで示し、それを達成しているか、また彼らがコントラクターあるいはサプライヤーとしてそれぞれの分野の研究開発にどれだけ投資をしているかも評価します

「私たちはこうお願いしているのです。『サウジアラビア国内で手に入るものを使い、調査をし、確実にサウジアラビア産だといえるような製品を作ることができますか?そのために投資をしていただけますか?』そしてこう伝えます、『それはすべてあなた方にかかっているのです』と」

ビジネスチャンスの扉を開ける

メーカーとサプライヤーが投資をすれば、彼らのiktvaスコアが上がり、その結果、サウジアラムコとのビジネスチャンスの扉が開きます。つまり一種の競争なのです。

2016年、シーメンス社はサウジ・ビジョン2030とサウジアラムコのiktvaプログラムに沿う形でサウジアラビアで初めて製造されたガスタービンを納入しました。全5機のうちの1号機です。

そのタービンは、サウジアラビア初、そして中東地域では最大規模のガスタービン製造施設である、シーメンス・ダンマン・エナジーハブで製造されました。

エネルギー業界のこれらの大手パートナー企業も、iktvaスコアを満たす必要があるのです。

調達・サプライチェーンマネジメント担当副社長、モハメド A. アルシャマリー

「当社は、実際にスコアを使ってビジネスを分配しています」とアルシャマリーは説明します。「調達に関して、メーカーとサプライヤーには2つの道筋があります。 iktvaに関して言えば、参加するか、しないかです」

「iktvaに参加していなければ入札に招待はされません。テーブルに着くことすらできません。iktvaスコアには基準値があり、それを満たしていれば入札に参加することができます。また、iktvaスコアの値が調達先決定に際し考慮されます。例えばが60%のスコアを持っているあるサプライヤーが、基準値が40%の製品に入札する、という風に」

「あるサプライヤーのスコアが40%で別のサプライヤーが60%である場合、後者がより多くサウジアラビア国内でお金を使っていることになります。後者は国内でより多く購入し、投資し、研究開発を行い、またサウジアラビアから輸出しています。当社は現在、より高いiktvaスコアを持つ企業がより多くのビジネス機会を得ることができるようなメカニズムを模索しています」

 

iktvaプログラムが目指すのは、すべてのサウジアラムコの調達活動のけん引役として、より強固な地位を確立することです。

「このプログラムは5年前に始まりましたが、今では誰もがそのコンセプトを理解し、サウジアラムコが本腰を入れていることを知っています。参加する企業はどんどん増えており、iktvaに大いに関わっています」とアルシャマリーは言います。

それは毎年開催されるダンマン・エキスポのiktvaフォーラム&展示会にメーカーとサプライヤーが積極的に参加していることにも表れています。イベントの開始以来、来場者は年々増加しています。

「現在、国内調達55%を達成しつつあります。今年の目標は56%でわずか1ポイント下回っていますが、すぐにクリアするでしょう」とアルシャマリーは自信をもって語ります。5年前は30%でしたので30ポイント近く飛躍したことになります。これは素晴らしい成果であり、当社の経営陣が一丸となってiktvaを支援しているからこそ得られたものです」

「経営陣は地域経済の発展に注力しています。そして、最も重要なことですが、周辺にサプライチェーンを持ちサウジアラムコを中心としたエコシステムを構築することで、当社の信用を高めることに注力しているのです」とアルシャマリーは述べます。

「最近この利点を実感するいくつかの事例がありました。サプライヤーとメーカーが隣接していることによって、速やかに調達を行い、短時間で物事に対応することができたのです」

豊富な在庫が重要

アルシャマリーは、会社の信用を築くには、近くにサプライヤーがいること、そして豊富な在庫を保つことが重要だと述べます。

「将来的には在庫を削減し地域の市場で持つこととしたい。在庫は企業が抱えるべきではなく市場にあるべきです。それこそがiktvaの目指すところです」

ラス・アルケア海洋アンカープロジェクト、サルマン国王エナジーパーク、プラスケム、ジャザン経済都市、および国内に点在するその他の工業団地は、投資を呼び込み、技術者や専門職の育成を促進するため多大な労力をかけて最高レベルのインフラストラクチャを提供している好例とされています。

「特に、ラス・アルケアは中核を担うプロジェクトであるため、そこで何が進められているかは大変重要です」とアルシャマリーは述べます。「ラス・アルケアでは政府がインフラを構築しており、進出企業にとって『プラグを挿せばすぐに使える』環境が整っています。つまり、港湾、ユーティリティなどすべてが揃っていて、例えば船舶エンジンや、鋳造、鍛造などの事業進出を後押ししています」

アルシャマリーは、鋳造と鍛造がローカリゼーション成功の鍵と捉えています。

「エネルギー部門全体がそこに集約されており、その地域のエコシステムをローカライズすることができます。ドライポートも作られる予定で、私たちが現在構築しているエコシステムやインフラはすべて、企業が参入しビジネスを行う上で魅力的な環境となるでしょう」

アルシャマリーは、このようなプロジェクトがiktvaやローカリゼーション、そしてサウジアラムコを支えると考えています。そして技術を持つ人材を育成するために、サウジアラムコは技術職業訓練公社と協力して16の技術アカデミーを設立しました。将来は全土で30にまで増やす予定です。

「これらのアカデミーを通じて、企業やサプライヤーは能力のあるサウジアラビア人を雇用しやすくなります」と彼は述べます。

「サウジアラムコはトレーニングを強化しておりこれらのアカデミーは誰にでも門戸を開いています。これも、当社による地域のエコシステムへの貢献の拡大を示すものです。

ですから、コントラクターにはアカデミーの人材を活用していただきたい。そうすることでアカデミーとサプライヤーとをつなぐことができるのです」

「総合的かつ集合的」道のり

つまりアルシャマリーは、iktvaをローカリゼーション、サウダイゼーション、研究開発の発展、および専門職育成のための「総合的かつ集合的」道のりと捉えているのです。

「私たちは技術者や専門職を育成するサプライヤーやコントラクターを信頼しています。なぜなら彼らは大きな事業には不可欠な存在だからです」

「サプライヤーには育成に協力してもらいたいのです。そして、専門職の育成と同時にもう一つ重要な要素が輸出です。サウジアラムコのためだけではなく、周辺の地域やそれ以外の地域のためにも協力してもらえるようサプライヤーに働きかけています。

もしサウジアラビアから輸出をする場合、国内で製造しサウジアラビア人を雇用すればiktvaスコアを獲得することができます。また、サウジアラムコは常に決まったサプライヤーから調達できるわけではありませんので、サプライヤーには継続して営業活動をして欲しいのです。つまり、自らの販路は自ら確保していただきたいのです」

サプライヤーとコントラクターの意欲を喚起し、かつプログラムを成功に導くため、iktvaスコアの評価方法は長年にわたって改善されてきました。

「私は情熱を持って取り組んでいます。なぜなら、iktvaは当社をさらに強くするものだからです。iktvaは常に私の意欲をかき立てます。サウジアラムコやサウジアラビアに何らかの貢献ができていると感じることができるのです」とアルシャマリーは語ります。