NONMETALLIC(非金属素材)の未来を描く初のシンポジウムを東京で開催

「化学の統合による無限の可能性(Endless Possibilities by Chemical Integration)」というテーマで開催された2日間のNONMETALLIC(非金属)シンポジウムと平行して実施された展示会場で、デモストレーションに耳を傾けるアハマド・アルサーディ。

サウジアラムコの技術サービス担当シニア・バイスプレジデントのアハマド・アルサーディは、先般東京で初めて開催されたNONMETALLIC(非金属素材)シンポジウムの場で基調講演を行いました。「化学の統合による無限の可能性(Endless Possibilities by Chemical Integration)」をテーマに招待制で開催された2日間のイベントは、業界大手の企業が将来の非金属分野でのビジネス機会について意見を交換し、各社の開発状況を紹介する場となりました。

アルサーディは320名の聴衆を前に、サウジアラムコは自社事業の効率性と性能を向上させ、従来の市場にとらわれない企業活動に向けて非金属素材を積極的に追求していると述べました。

またアルサーディは、非金属製品が付加価値を生みうる4つの主要分野(石油・ガス、自動車、建設、包装)について概説し、「非常に大きな機会であることから、サウジアラムコは世界的な非金属素材ビジネス展開を主導する役割を果たすという目標を設定するに至りました」と述べました。

非金属のフローライン・ネットワーク

サウジアラムコは既に20年前から、腐食から発生する年間コストを10%削減するという目標を掲げ、非金属分野でのロードマップ作製に着手しました。

アルサーディは、「周知のように、腐食は稼働設備の安全性、完全性、信頼性に影響を与える恐れがあります。腐食によるコストは膨大です。サウジアラムコのフローライン・ネットワークの一部は主に炭素鋼製で、一般的な油田流体、H2S、CO2、さらにはバクテリアにさらされるため腐食被害を受けやすい状態にありました。しかし当社は、フローライン・アプリケーションに使用される強化熱可塑性パイプ(RTP)が腐食防止に非常に有効であることを発見しました」と語りました。

成長分野

アルサーディによると、自動車分野でのポリマーは、金属の次に車両に最も普及している素材であり、成長の可能性は非常に高く、 「自動車プラスチック市場は、2017年から2025年の間に倍増すると予測されています。軽量電気自動車や統合モビリティプロバイダーの登場といった自動車事業における革新は、金属部品を代替する非金属素材の開発数の増加にも見られるように、非金属素材の利用増の追い風となるでしょう」と述べています。

建築と建設に関しては、サウジアラムコは既に建設にポリマーを活用しており、「先般、建設プロジェクトの1つにおいて、周長400メートルの基盤に耐腐食性繊維強化ポリマー鉄筋を導入しました。並行する取り組みとして、ジャザン経済都市(Jazan Economic City)プロジェクトでは、長さ21キロメートルの豪雨の際の雨水排水路に繊維強化ポリマー鉄筋を使用する大規模なイニシアティブを実施しています。完成すれば、繊維強化ポリマー鉄筋を使用して建設された世界最大のプロジェクトになるでしょう」とアルサーディは語りました。

原油から石油化学品まで

サウジアラムコの長期戦略は、非金属素材から成長機会を開拓し、炭化水素バリューチェーン全体から最大の価値を引き出し、ダウンストリーム事業を拡大することです。
今年初めに、サウジアラムコは、非金属技術の研究開発を行うために、英国のケンブリッジ大学近くにある溶接技術研究所(The Welding Institute)の敷地内に非金属技術革新センター(The Nonmetallic Innovation Center)を開設しました。
石油化学製品分野は、2030年までに石油需要を30%増加すると予測されており、2030年から50年にかけてさらに50%の成長が見込まれることから、当社は統合された精製・化学品生産の開拓に向けて日量200万バレル相当の原油をシフトする計画を立てています。

カーボンフットプリントの削減

非金属素材などの開発を通じて、サウジアラムコは石油化学とエネルギーをリードする企業としての地位を確立し、その過程において、現地で製造を行うことにより、製品ライフサイクルを最短に抑え、カーボンフットプリントの削減を目指しています。
本イベントはサウジアラムコとアラムコ・アジア・ジャパンの共催で、大手日本企業、研究所、非金属分野の主要プレイヤーらが参加し、SABIC(サウジアラビア基礎産業公社)並びにSAGIA(サウジアラビア総合投資院)からゲストスピーカーが招かれました。