サウジアラムコ、世界のエネルギー供給における主導的役割を強化:2017年 年次報告書

世界をリードするエネルギー・化学企業のサウジアラムコは、石油精製と化学品生産の統合により付加価値を高め、国内需要に対応するクリーンな天然ガス供給の拡大によって、原油とコンデンセートのトップ生産者としての自社の役割を強化する戦略的成果をまとめました。

2017年の業績ハイライト:

  • 日量平均1,020万バレルのコンデンセートを含む原油の生産 
  • 日量平均87億スタンダード・キュービック・フィートで、4年連続増加の天然ガス供給 
  • 日量平均690万バレルの原油輸出 
  • モティーバ・エンタープライズ(Motiva Enterprises)の買収を完了、北米最大の製油所を専有 
  • 中国とマレーシアでの提携により、世界的なダウンストリーム事業ポートフォリオを拡大 
  • 技術革新、原油とその派生品の温室効果ガスの削減強化への継続的な取り組みを反映し、自社最大となる230件の米国特許を取得  

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サウジアラムコ社長兼CEOのアミン・ ナセル(Amin H. Nasser)は、サウジアラムコは2017年にアップストリーム事業において様々な石油・ガスの大規模プロジェクトを進展させたと述べました。 また、ダウンストリーム事業では、引き続きグローバルネットワークを強化し、炭化水素バリューチェーン全体で最大価値を引き出すための鍵となる複数の合意を完了したことを強調しました。何よりも、サウジアラムコの安全性は依然として強固であり、業界最高水準であると述べています。

アップストリーム(上流)事業分野のハイライト

2017年も、サウジアラムコは石油・ガスのアップストリーム事業における主導的地位を強化し、サウジアラビア王国の炭化水素資源管理を最適化しました。 長期的価値を最大限に高めることを意図したそのアップストリーム事業戦略は、生産規模における競争優位性の活用に重点を置いています。 

また、成熟した油田からの生産を調整し、比較的新しい油田や二次貯留層(レザボア)を促進し、新たな利益による新規貯留層の開発によって、生産量において世界をリードする原油生産者としての地位を今後も維持しながら、戦略的統合と天然 ガス事業の拡大による価値獲得に向けて事業の多様化に努めてまいりました。 

サウジアラムコが生産した原油(コンデンセートを含む)は、日量平均1,020万バレル(bpd)、 総生ガス処理量は、日量平均124億スタンダード・キュービック・フィート(scfd)でした。 また、新たに油田2ヶ所(ハラダ [Haradh] 南東のサカブ [Sakab] とルブアルハリ [Rub' al-Khali] 砂漠のズムル [Zumul] )とガス貯留層1ヶ所(サハバ [Sahba] 油田内のジャウフ [Jauf] )を発見し、クライス(Khurais)油田の能力を2018年のうちに30万bpdに拡大するプログラムを継続しました。 

さらに、王国内のガス供給量を増加させる取り組みを継続し、工業用のユーティリティー拡張を促進するための原材料を追加提供により王国内のエネルギー効率を改善し、輸出可能な原油量を増加させました。 主なプロジェクトの成果には、天然ガス7,500万scfdとコンデンセート4,500bpdの生産に向けたミデヤン(Midyan)非随伴ガス田の整備、発電に使用する液体燃料の代替、当社全体のガス処理能力を上昇させる要素のひとつであるファディリ(Fadhili)ガスプラントの生ガス処理量25億scfdに向けた進展などがあります。 

処理能力拡大のための追加プログラムには、2021年に稼働予定のハウイヤ(Hawiyah)ガスプラントの新規処理施設などがあり、11億scfd以上の能力が追加され、合計で約36億scfdの処理が見込まれます。 さらに、ウスマニヤ(Uthmaniyah)ガスプラントとハウイヤ(Hawiyah) ガスプラントの拡大により生産される天然ガスからエタンなどのNGL回収のため、ウスマニヤ・ガスプラントにおいて天然ガス液深層回収トレインのエンジニアリング、調達および建設を開始しました。 

ダウンストリーム(下流)事業のハイライト

サウジアラムコのダウンストリーム事業は、引き続き当社の成長と多様化に向け、ポートフォリオやパートナーシップを拡大・統合して炭化水素チェーン全体の価値を高め、さらなる収益源を創出しました。 2017年の原油輸出平均は日量690万バレルで、総精製能力は日量490万バレルでした。 

サウジアラムコは、テキサス州ポートアーサー(Port Arthur)に北米最大の製油所を有するモティーバ(Motiva)社の買収を完了したほか、マレーシアの石油精製・石油化学総合開発(RAPID)プロジェクトにペトロナス(Petronas)社と共同参加する契約書に調印しました。このプロジェクトには、30万bpdの製油所、年間300万トンのオレフィン処理能力、化学品製造部門などが含まれます。 さらに、中国で30万bpdの製油所を建設し、既存の製油所を拡張する覚書を中国北方工業公司(NORINCO)と締結しました。 

サウジアラビア国内では、ダウ・ケミカル(Dow Chemical)社との合弁会社サダラ(Sadara )の26プラントのうち最後の一基がフル稼働し、目覚ましい成果を上げました。これは、サウジアラビアの化学産業が次世代を迎えるための試金石となるでしょう。この施設は、エタン8,500万scfdおよびナフサ53,000bpdという万全の供給能力を備えています。 

ダウンストリーム事業の統合、拡大、石油化学製品の成長に対するサウジアラムコのアプローチは、技術と革新への揺るぎない取り組みと、最先端の科学を発展させるための世界的なパートナーシップの発展によって支えられています。 

これは、実績ある原油から化学品までの技術(Crude Oil to Chemicals Technologies :COTC)を大規模なスケールで効率的に適用すること、そして知識の最前線、並びに石油化学品生産における可能性の境界を前進させ新たな原油から化学品(Crude to Chemicals : C2C)技術を開拓することを意味します。 

サウジアラムコは、2017年に試験実施された原油から化学品(C2C)までの先駆的な熱技術プログラムを継続しており、化学品の増産を達成しました。 また、リスクを軽減し、この技術をスケールアップするために、技術提供のリーディング企業であるシカゴ・ブリッジ・アンド・アイアン(Chicago Bridge & Iron)およびシェブロン・ルムス・グローバル(Chevron Lummus Global)との戦略的パートナーシップを確立しました。 

サウジアラムコは、サウジアラビア基礎産業公社(SABIC)と共にサウジアラビアに原油から化学品(COTC)までの総合コンプレックスを設立するための覚書(MoU)にも調印しました。これにより、40万bpdの処理能力と、輸送燃料に加え化学品とベースオイルの年間生産量900万トンが見込まれます。 

2017年に操業を開始したアラムコ・パフォーマンス・マテリアルズ(Aramco Performance Materials)は、ポリウレタンコーティングやエラストマー、接着剤などの幅広い高性能アプリケーションに使用され、二酸化炭素含有量が最大50%でコスト競争力があり、持続可能なCONVERGE®ポリオールの委託販売を開始し、有用な製品への活用方法についてデモストレーションを行っています。 

ベースオイル事業の成長促進においては、LUBEREF、S-Oil、およびモティーバ系列会社などの世界的に互換性のあるサウジアラムコ・ブランドベースオイルの確立など、2017年に数々の画期的な取り組みを行い、 aramcoDURA®およびaramcoPRIMA®ベースオイルの国内販売を開始しました。 

技術革新分野のハイライト

先駆的技術への継続的な投資、グローバルな研究開発ネットワークと共同パートナーシップは、サウジアラムコの業務効率と生産能力を推進する鍵となる要素です。 

2017年には、貯留層の強化について理解を深めるために、その土台となる貯留層シミュレーターTeraPOWERSとGigaPOWERSの計算モデルの解像度を向上させました。また、もう一つの自社技術であるGeoDRIVE総合地震学的描像プラットフォームは、超高解像度の地中マッピングと特性評価を可能にするために開発されました。 

またサウジアラムコは、革新的な非金属材料の使用を拡大しました。 2,300km超の非金属製パイプを配備し、ライフサイクル全体で見た場合の大幅なコスト削減が実現しました。 非金属材料は、建設、自動車、再生可能エネルギーなどの分野において追加の原油市場も創出し、地元製造業の機会創出を支援しています。 

技術革新へのサウジアラムコの取り組みは、2017年に自社最大となる230件の米国特許が認定されたことに象徴されます。 このような数多くの特許は、エネルギー生産者や消費者などにも恩恵をもたらす原油とその派生品の温室効果ガス量のさらなる削減での当社の継続的な投資を反映するものです。 

持続可能性イニシアチブ

二酸化炭素排出量が低い原油の維持は主要な焦点であり、業務の全ての段階でベストプラクティスを適用して達成されました。 

2017年において、20ヶ国以上から中国市場に供給された全ての原油を対象とした油田から製油所まで(well-to-refinery)の主要研究では、サウジアラムコの貯留層の生産性、省エネルギー消費の節水生産、低フレア率を反映して、サウジアラビア産の原油の二酸化炭素排出量が最も低いことが示されました。2017年のフレアの度合は年間ガス生産量の1%以下にとどまりました。 

燃料エンジン技術では、パリのアラムコ燃料研究センター(Aramco Fuel Research Center)でCO2排出量を削減するオクタン・オン・デマンドシステムを完全統合した車両デモンストレーションを完了しました。この技術は、アンチノック性を達成するために2種類の燃料を使用し、ガソリンエンジンの効率を約8%向上させます。 

シチズンシップ

サウジアラムコは、自社戦略目標に沿って、長年にわたり積極的に社会貢献活動に取り組んで参りました。 

クリティカルサイエンス、技術、工学、数学(STEM)分野において競争力を高めるプログラムを継続的に実施し、サウジアラビア王国の人口の大半を占める若者を対象とし、高度に熟練した労働力の育成を引き続き支援しました。また、 2017年の社会貢献活動には、エネルギー研究、持続可能性、エネルギー効率などの高等教育プログラムへの支援も含まれます。 

零細産業の成長促進分野では、サウジアラビア各地の地域社会に経済的福利を向上させるためのツールを提供しました。 国内特有の環境に敏感な生息地を保護するプログラムには、現在建設中のラスタヌラ(Ras Tanura)のマングローブ・エコパーク(Mangrove Eco-Park)やシャイバ野生動物保護区(Shaybah Wildlife Sanctuary)などがあります。 

また、当社のアブドゥルアジーズ王世界文化センター(King Abdulaziz Center for World Culture)は、毎年150万人の訪問者が見込まれ、芸術や文化遺産を豊かに表現する様々な展示を提供しました。 

さらに、聴覚障碍者1,000名に補聴器、検査、そして視聴を提供したプログラム「I Want to Hear(私は聴きたい)」等、即効性があり社会にポジティブな影響を与える活動を実施しました。 

将来に向けて

サウジアラムコ社長兼CEOのアミン・ナセルは、「2017年の業績には、将来にわたり世界のエネルギー需要を確実に満たすための支援、石油化学製品や先進的材料を通じて石油からさらに大きな価値を引き出すための技術とイニシアチブの追求、エネルギーのカーボンフットプリント削減を継続するための研究開発への投資など、業務効率の向上に対するサウジアラムコの揺るぎない取り組みが反映されています。2017年の成功を素地として、引き続き、石油・ガス探鉱と生産における当社の主導的地位の強化、ダウンストリーム事業の成長促進、技術革新への注力を維持してまいります」と述べています。 

 

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