アブドゥルアジーズ王世界文化センター (Ithra)からの代表団はアラムコ・アジア・ジャパン(AAJ)と共に、先般、横浜で開催された、一般財団法人片倉もとこ記念沙漠文化財団(MOKO-FDC)主催の国際シンポジウム「アラビア半島の文化遺産保護の現状と展開―サウジアラビアを中心として」に招かれ、同シンポジウムに参加しました。
今回のシンポジウムは、文化遺産の保全・保護の奨励を目的とし、2014年に始まったAAJとMOKO-FDCとの5年間のパートナーシップの一環として開催されました。また、このシンポジウムは、サウジアラムコの「企業として責任ある社会貢献活動」および「アジア太平洋寄付プログラム」の取り組みの中で行われた、最新の活動の一つでもあります。
サウジアラムコの代表として、Ithraの学芸員であるイドリス・トレヴァサン(Idries Trevathan)が「Islamic Art and the Saudi Public - Conducting Audience Research at the King Abdulaziz Center for World Culture (Ithra) :イスラム美術とサウジ一般大衆、アブドゥルアジーズ王世界文化センター(Ithra)によるアンケート調査」と題する基調講演を行いました。トレヴァサンは、Ithraでこれまでに実施されたアンケート調査が、イスラム文明ギャラリーをはじめとする博物館全体の目標や目的の策定にどのように役立ったかについて語りました。
また、トレヴァサンは基調講演の中で、「ギャラリーは、常設スペースを使用し、広義な意味でのイスラム物質文化の研究や保護、展示に資力を投じたサウジアラビア初の文化施設としてユニークな役割を担っています。また、イスラムの文化遺産と人々や地域、そして、これらの文化遺産を生み出した地域社会とを再び結び付けるユニークな機会を提供するだけでなく、サウジアラビア国民と、周辺にありながら見過ごされがちなサハラ砂漠以南のアフリカや南アジアおよび東南アジアの地域や文化を含む、より広いイスラム世界とを繋ぐ試みも行っています」と説明しました。
同じ目的への絆の強化
AAJは企業の社会貢献活動の一環として、MOKO-FDCと共に砂漠文化に関する調査研究のほか、展示会やセミナー、シンポジウムなどの活動も支援しています。MOKO-FDCは、中東およびイスラム世界研究の草分け的存在であり、日本人外交官の妻であった故片倉もとこ教授の遺志により、2013年に設立されました。彼女の研究には、50年以上も前、ワーディ・ファティマ地区において10年以上にわたり続けられた実地調査などがあり、中東文化やアラブの土着文化、アラブ遊牧民の日常生活における独自の価値観などについて計り知れない見識を得ることができます。
2015年には、MOKO-FDCの代表団がサウジアラビアを訪れ、Ithraのメンバーとともに、今後のコラボレーションに向けた協力や人事交流の可能性について模索しました。今回のIthraへの招待は、これを受けたものです。
未来への知識の共有
代表団は、日本第二の都市大阪にある国立民族学博物館(略称「みんぱく」)も訪れました。1974年に開催された大阪万博(Expo '70)の跡地に建設されたこの博物館は、文化人類学・民族学に特化した世界で唯一の大学研究機関です。MOKO-FDCは現在、砂漠文化に関する展示会をここにて2019年に開催するという計画に取り組んでいます。
代表団はまず、百万点もの膨大な民族学資料を所蔵する博物館や収蔵庫を見学しました。そこでは、普段は非公開の特別な収蔵庫に保管されている貴重な資料を目にするという、またとない機会も得ることができました。
トレヴァサンは、「このように重要なコレクションを間近で見ることができ、大変光栄です。未分類で公式の解説もついていない状態で、世界中から集められたこれらの収蔵品を見て私が最も驚いたことは、まったく異なると思われる文化や伝統の間に驚くべき類似性が見られたことです」と述べています。
代表団とみんぱくメンバーはその後、サウジアラビアの文化、特に砂漠文化遺産の分野についての理解を深めるために実行可能な共同プログラムに関する意見やアイデア交換をしました。
トレヴァサンは、訪問の最後に次のように述べています。「Ithra、MOKO-FDC、みんぱく、および他のサウジアラビアの文化機関の間による今後のコラボレーションは、サウジアラビアと日本とのデータ/情報共有や研究プロジェクトの促進という点において大きな可能性と成果を提供するものとなるでしょう。サウジアラビアと、より広いイスラム地域には、豊かで多様な文化遺産があり、何層にも重なるこれらの遺産を紐解くためには、より多くの研究が必要とされます。私たちは、イスラムや中東の文化研究に一生を捧げた献身的な人類学者であった故片倉もとこ教授の業績と遺産に敬意を表し、未来へと引き継いでいくこの代表団の一員になれたことを非常に嬉しく、光栄に思っております」