サウジアラビア初、二酸化炭素の回収・貯留プロジェクト開始

サウジアラムコはウスマニヤおよびハウイヤのNGL施設において、サウジアラビア初の二酸化炭素の回収・貯留(CCS)プロジェクトならびに二酸化炭素圧入石油増進回収法(EOR)プロジェクトを開始しました。中東最大のCCSプロジェクトです。

ハウイヤの二酸化炭素回収プラントと、ウスマニヤ油田の石油増進回収プロジェクトとで構成されるこのパイロット事業は、環境への責務とシチズンシップを通じて、率先して模範を示すというサウジアラムコの取り組みを示すものです。このプロジェクトは、二酸化炭素を石油貯留層に圧入することで貯留メカニズムとして機能します。高圧での二酸化炭素注入は石油の回収も同時に増大させます。このような理由から、二酸化炭素の回収・貯留は、環境負荷を低減させ収益性も確保する優れた技術的ソリューションとみなされています。

炭素管理は現在、サウジアラムコの事業の必要不可欠な一部です。1970年代にマスターガスシステムが確立されて以来、二酸化炭素排出は著しく減少しました。EXPECアドバンスト・リサーチ・センター(EXPEC ARC)に率いられた、サウジアラムコの炭素管理技術のロードマップには、二酸化炭素排出を低減させるために必要な技術の開発を最終的な目標に掲げる様々な分野が含まれています。

「この画期的なイニシアチブは、当社が業界のリーダーとして、地球規模の環境問題への積極的な取組みのソリューションの一部であることを示しています」と、サウジアラムコの社長兼CEO代行を務めるアミン H. ナサール(Amin H. Nasser)は言います。「サウジアラムコは、企業炭素管理技術ロードマップ(Corporate Carbon Management Technology Road Map)の一環として広範な研究を行い、世界が求めるエネルギーを供給しながら、カーボンフットプリントを低減することに成功しています」

サウジアラムコの環境保護方針は1963年に正式に確立されており、環境への責務は長年にわたり、サウジアラムコの事業の顕著な特質となっています。効果的な炭素管理は、エネルギーを安全かつ責任をもって安心して提供するという目標を満たすためにサウジアラムコが採用している様々な戦略のうちのひとつです。ガスフレアの低減、坑井施設でのゼロ排出技術の導入、すべてのプラントやコミュニティにおける包括的な水資源保護方針の実施もその炭素管理の取組みの一部です。

「EXPEC ARC、そして過去数年間にわたって、プロジェクトの企画、研究データの収集、設計と実施のために、先陣をきってウスマニヤにおけるパイロット事業をすすめてきたチームにとっては本当に非常に誇らしい瞬間です」とEXPEC ARCマネージャーのワリード・アルムルヒム(Waleed Al-Mulhim)は言います。「このプロジェクトはアップストリームおよびダウンストリームのいくつかの部署の支援を受けてきました。チームの力を合わせた努力により完成までこぎつけました」

EXPEC ARCのリザブワーエンジニアリング部の主任技術者兼炭素管理チームのコーディネーターであるアリ・アルミシャーリ(Ali Al-Meshari)は、パイロット事業の開始までこぎつけることができたのは大きな成果だと言います。

「全体的な二酸化炭素排出量低減に目に見える影響を与えることになるでしょう。毎年最大80万トンの二酸化炭素を注入し、この二酸化炭素が地下にどの程度貯留された状態でとどまるかを測定するモニタリングシステムを確立しました」とアルミシャーリは言います。

継続的なモニタリング

EXPEC ARCにおける二酸化炭素EOR研究の第一人者であり、二酸化炭素EORプロジェクトチームを率いるスニル・コカル(Sunil Kokal)によれば、プロジェクトには、4つの圧入井と4つの生産井が一列に、モニタリングと監視のための観測井2つがもう一列に並んでいます。推測では、注入された二酸化炭素の最大40%までが永久に貯留層に留まることになります。プロジェクトでは、より一般的な水攻法をしのぐ石油回収を達成することも目標としています。このパイロット事業の主な目標は、どのくらいの量の二酸化炭素が貯留層に留まるかを見極めること、石油回収の増加量の推測(水攻法を超えて)、二酸化炭素の貯留層内での移動などこれに伴うリスクと不確定要素への対処、運営上の問題の特定などが挙げられます。

日量4,000万標準立法フィート(scfd)の二酸化炭素が使用されますが、これは、ハウイヤNGL回収プラントで回収・処理され、注入のために85㎞離れたウスマニヤ油田までパイプラインで輸送されます。

「二酸化炭素は、水と交互に使用しながら4つの圧入井に注入されます」とコカルは説明します。二酸化炭素と水は約2,800重量ポンド毎平方インチ(psi)の圧力で交換注入装置に入れられ、ひと月ごとに入れ替えられます。

地域初

高度なモニタリング・監視プログラムがパイロット事業のために開発され、データを取得しパフォーマンスを評価します。モニタリングプログラムの主な目標は、貯留層内での二酸化炭素の移動、主要なリスクや不確定要素の評価、回収メカニズムの理解、オペレーション上の問題の特定、サウジアラビアのみならずGCC地域全体で初の二酸化炭素貯留事業に対する市民からの信頼を構築することが挙げられます。モニタリングには、地震モニタリング、電磁法探査、ボーリングおよび表面重力、坑井間距離のトレーサー試験など様々な手法が用いられます。

「多くの新しい技術が採用されています。いくつかはサウジアラビアやこの地域で初めて使用される技術であり、多くは世界初の技術です」とアルムルヒムは言います。

圧縮工程の終わりには、二酸化炭素は3,500psiまで圧縮され、高密度流体のように、超臨界状態にあります。この状態で、二酸化炭素は、2,800psiで注入するために、パイプラインでガワール油田の北ウスマニヤ地域に輸送されます。石油増進回収の流体の処理はウスマニヤGOSP-7で行われます。

「圧縮工程は7段階ギアを内蔵したコンプレッサー内で行われます。このようなコンプレッサーとしてはサウジアラムコで今までに使われたものの中で最大です」とHNGLの試運転エンジニア主任のアブドルラテフ・アルマフティ(Abdullatef Al-Mufti)は言います。圧縮の5段階目の後、二酸化炭素は依然として「ウェット(wet)」とみなされ、処理のためにガス脱水装置に送られ、その後、コンプレッサで再び6段階、7段階の処理が行われます。

プロジェクトの立ち上げと運営は、新しいコントラクターや新しい技術が採用されたことから複雑さが増しました。南部地域プロジェクト部のプロジェクトエンジニア主任のモハメド A. スワイエル(Mohammed A. Suwaiyel)は、成功へのカギはプロジェクトの完了に向けてあらゆる部署が協力することにあったと言います。すべての取組みを進める中、ハウイヤとウスマニヤの業務はすべて通常通り行われました。

「プロジェクトには1,100万延労働時間数が費やされ、事故は1件もありませんでした」とスワイエルは言います。

先月のハウイヤNGL施設での二酸化炭素回収ユニットの試運転後、液化二酸化炭素が現在、ウスマニヤ油田に注入のために輸送されています。ウスマニヤGOSP-7の近くには、新しい独立型の高圧生産トラップ(HPPT)、新しいコンプレッサー、高濃度二酸化炭素生産ストリームを取り扱う関連施設が建設されました。ここで、生産された液体のモニタリングが行われ、サウジアラムコは出来る限り多くの二酸化炭素が地下に貯留されたままでとどまるようにする追加の手順をほどこします。

注入施設である南部地域のウスマニヤ油田はプロジェクトのカギとなりました。SAOO技術サービス部署は二酸化炭素が安全に注入されるよう、両方の施設の建設を調整、連結させました。いくつかの部署が、ロギング、テスト、評価など、進行中の生産に関連する活動に関与しています。

ウスマニヤGOSP-7では、エンジニアがプロジェクトをモニタリングして、二酸化炭素が地中に貯留された状態でとどまるよう確認しています。このため、GOSP-7には3段階の分離機、二酸化炭素コンプレッサートレイン、フレアシステムなどの新しい設備が設置され、さらなる処理のために回収された液体を処理しています。

油田では、EORプロジェクトのために特別に掘削された10つの坑井には、油井孔モニタリングセンサーが装備され、プロジェクトの実施されている間、貯留層のパラメータを十分に監視します。10つの坑井はすべて連結されており、プロジェクト地域全体で完全なアクセスと制御が確保されるよう、リアルタイムの流出量測定器、自動遠隔操作チョーク弁が配備されています。

パイロット事業は今後3~5年にかけて、現場のエンジニアおよびEXPEC ARCによって調査が行われます。このプロジェクトから得た教訓がサウジアラビア各地の他の施設や油田で利用され、世界で最も生産性が高く信頼できるエネルギー供給会社としてのサウジアラムコの地位の維持に役立ちます。