- 従来の直線型(リニア)経済では廃棄されてきた資源を、循環型経済によって再利用・再生
- 循環型経済への第一歩は、CO2排出量削減に向けた仕組みづくり
- 2020年、アラムコは循環型経済をリードする企業を目指し本格始動
循環型経済で資源をよりサステナブルに管理
サステナブルな未来への道筋は、考え方としてはとても単純です。それは循環型経済と呼ばれる、世界的に広まりつつあるアプローチです。
アラムコは、循環型経済を実務と企業文化の両方に組み込もうとしています。そのためには、ビジネスプロセスの徹底的な見直しと、この新しい思考に基づく人材育成が必要です。
アラムコは、循環型経済を社内に根付かせるために、実践的かつ文化的な取り組みを行っています。これには、ビジネスプロセスを上から下まで再検討し、新しい考え方を身につけるために従業員を訓練することが含まれます。
2020年、当社は循環型経済タスクフォースを立ち上げ、世界中のベストプラクティスを検証したのち、循環型経済思考の採用に向けた7つの主要原則を定めました。ある8部門横断型の試行プロジェクトでは、200以上の循環型経済の事例や取り組みが紹介され、現在は全社的に広範な展開をしています。この7原則は、資本プロジェクトのガイドラインやエンジニアリング基準にも導入されています。
当社の循環型経済への取り組みは、すでに一定の効果と評価を得ています。アラムコは、欧州品質管理財団が主催する2021年サーキュラー・エコノミー・チャレンジ賞を受賞しました。
循環型経済とは、18世紀の産業革命初期から続く「take(資源を採って)・make(作って)・dispose(捨てる)」という直線的な経済システムからの脱却を図るものです。循環経済型の目的は、特に廃棄物を減らし、材料の再利用・再製造・リサイクルを最大化することで、材料や製品を効率的に管理し、資源の価値を最大限に維持するためのシステムや事業モデルを構築することです。
G20諸国の中には、野心的なCO2削減目標を達成するために資源の効果的な管理が不可欠な国もあります。
循環型経済に即した行動をするためには、事業のあり方を全面的に見直すことを余儀なくされます。当社の循環型経済タスクフォースのリーダーであるヤセル シャフィエは、次のように述べています。「このモデルは、まさに現状を大きく変えるものです。効果的かつサステナブルなパフォーマンスの達成を目指すだけでなく、経済的利点も大いに見込めるのです」
タスクフォースにより、当社の事業全体に適用する7原則が策定されました。
• 1 循環型経済に即した設計:サステナブルで効果的なプロセスやシステム、資産、施設の設計
標準化やモジュール化は、アラムコが既に実践している重要な循環型設計の概念です。例えば、ミデヤンのガスプラントでは、現場で建設を進める従来の方式ではなく、モジュール式スキッドマウント構造を採用しました。あらかじめ組み立てた構造物を用いることで建築資材を減らし、経費を大幅に削減しました。
• 2 循環型サプライチェーンの構築 :循環型サプライチェーンやリバースロジスティクス(静脈物流)を活用して、原材料の調達と廃棄物の発生の抑制に貢献
当社の「廃棄物から商品を」プログラムでは、2020年の一年間だけでドラム缶22万本、スチール84,000トンのリサイクルに成功しました。こうした資源を国内メーカーに原材料として還元することにより、原材料の調達を最小化し、その結果価値にして3,000万ドル以上相当分を回収することができました。
• 3 環境負荷の低減:温室効果ガス排出量の削減のための脱炭素化および貴重な水資源の保全に注力
ハウイヤNGL回収プラントにおける当社の炭素回収プロジェクトは、大気中へのCO2排出量を最小限にすることを目的とするもので、これまでに300万トンものCO2排出を抑制しました。これは、2020年のG20サミットで提唱されたCO2の削減、再利用、リサイクル、除去という循環型炭素経済の理念に基づく取り組みです。回収されたCO2は、石油増進回収やコンクリート硬化促進などのプロセスで、それ自体が資源として扱われるようになります。
• 4 資源や資産のライフサイクル維持・延長 :当社のライフサイクル管理プログラムでは、再利用や修理、アップグレード、再配置により、それらの寿命を延長し、設備を最大限活用することを目的としています。
一例として、最近では、21基のガスタービンを交換ではなく、アップグレードして再稼働しました。新たな設備の建設や運搬のために原材料を調達する必要がなくなり、不要な支出も抑えられます。
• 5 再生可能な資源の利用:再生可能エネルギー源や無害な資源を最大限に活用し、天然資源の利用を最小限化
当社のミドラ・ビジネスセンターでは、駐車場の日よけに設置された太陽光パネルで発電を行います。このシステムにより、施設で利用するすべての電力をまかなっています。
• 6 廃棄物の資源化 :現在廃棄されている資材の有効利用
当社のダーラン居住区では、飲料水プラントでは処理できない排水を、灌漑やプラントの全館型空調システム用冷却水として再利用し、年間数十億ガロンもの地下水を節約しています。
• 7 革新的技術の導入:循環型経済を実践する上で重要な側面となる、プロセス最適化、資産の信頼性、業務効率に重点を置いたデジタルソリューションの拠点となる最先端の4IR(第4次産業革命)センターを設立
エネルギー強度モニタリングは、アラムコの全施設におけるエネルギー使用実績を分析するシステムです。これにより、2020年までに石油換算で累積日量2億3,800万バレルを節約、CO2は2,700万トンを削減しています。
循環型経済に関する原則の多くは、アラムコのDNAにすでに組み込まれています。1970年代より、大規模なマスター・ガス・システムを構築、油井から産出されるガスを焼却処分(フレアリング)する代わりに回収し、有効利用しています。
エネルギーの効率化・最適化は、当社エンジニアリングチームの基本理念となっています。
2020年、チーフエンジニアのジャミル J. アルバガーウィ博士の主導により、全社的に循環型経済を制度化して今後定着させていく計画が策定されました。
アラムコの社長兼CEOのアミン H. ナセルは、「私たちは『クローズ・ド・ループ*』させる必要がある」とし、炭素などの循環システム構築に向けて「最大限の努力をしていく」と述べました。
*クローズドループはサーキュラーエコノミーの根本的な概念であり、「廃棄」されていた製品や原材料などを新たな「資源」と捉えて、循環させること。