サウジアラビアの生物多様性を守るモデルづくり

国土の多様性

サウジアラビアにおける生物多様性の豊かさをより理解するには、国土の多様性を見ればわかります。国の西側に位置する紅海の沿岸には、亜熱帯の島々が何百もあり、その周囲には壮麗なサンゴ礁が、豊かな生態系を形成しています。

南西部には壮大なアスィール山脈がそびえます。ここは、国内で最も降雨量が多く気温の低い地域です。山中には固有の野生生物が数多く生息し、世界で最も重要な生物多様性のホットスポットとして正式に登録されています

サウジアラビアには、世界で最も稀有な動物もいます。例えば1964年ジーザーンの沖合にあるファラサン諸島で初めて発見されたヘビの一種セルソアイランドレーサーは、その後は一度も目撃されていません。

これらの地域では、アラビア半島原産でここにしか生息しない55余の希少種や亜種を含め、500種以上の動植物が保護されています。

当社のアブハ保護地区には、サウジアラビアの陸生ほ乳類全種のうち、実に30％の種の生息が確認されています。アブハ保護地区は、アラビア南西部固有の鳥の一種ノドグロイワシャコにとっても、おそらく最適な生息環境となっていると考えられています。

サウジアラビアの絶滅危惧種

世界中で絶滅の危機にさらされている動植物が増加する中、サウジアラビアも例外ではありません。国内の動植物の約33％が、正式に絶滅危惧種に指定されており、おそらく7割の動植物の個体数も減少していると考えられています。

例えば、かつてアラビア半島を闊歩したダチョウは、ルブアルハリ砂漠にまで頒布していましたが、乱獲のためこの数十年で、絶滅寸前まで激減してしまいました。

アラビアンバスタードも、以前はサウジアラビア西部に広く繁殖していた鳥ですが、生息地の減少や狩猟によりその数は漸減し、1993年頃にその姿を消してしまいました。ただ、幸いにも2020年にファラサン島で1羽の目撃が報告されています。

アラブの古典詩にもよく詠われた砂漠の鳥セネガルサケイも、かつてはサウジアラビアの北半分一帯に生息していました。それが1980年には見かけなくなり始め、現在ではヤンブおよびハラダ近郊の2ケ所に小規模に生存が認められるだけとなりました。

数多くの種が激減しつつある今、どの種を優先的に保護すべきかを判断するのは容易ではありません。では環境学者たちは、どの種を最初に保護すればよいのでしょうか。

サウジアラビアにおいて最も保護優先度の高い動植物

この科学的な数値化システムを用いて、今サウジアラビアで最も保護を必要とするスコアの高かったのが、アラビアンブリームという淡水魚です。この魚は、1983年に最初に発見された後、2014年にカイバーで再び生息が確認されるまで、一度も目撃されることのなかった魚です。絶滅の危機に瀕するこの魚は、サウジアラビアのとある小規模ダムにのみ生息しています。

その次に優先度の高い動物は、アスィール・マグパイという鳥です。国内のアスィール山脈にあるジュニパー（ヒノキ科の針葉樹）の森でのみ見ることができます。

アラムコの環境学者たちがGISモデルによるマップ化を試みたところ、絶滅が危惧されるこの鳥は、地域開発により生息地の面積がわずか80平方キロメートルにまで減少してしまっていることが明らかになりました。おそらく、100組のつがいが残るのみと考えられます。

継続した保護の取組み

最優先の保護を必要とする上位20の生物種の多くは、小型の淡水魚、爬虫類、鳥類などですが、そのほとんどはあまり広く知られていません。したがって、これらの種について知識を深め、効果的に保護するためにも、これらの種に対する研究や保全活動がより一層重要です。

アラムコでは、サウジアラビアの貴重な動植物種を最大限保護していくために、こうした重要な生息地を生物多様性保護エリアに指定する取組みを継続しています。

あらゆる新規プロジェクトにおいても、生物多様性へ実質的な好影響を与えることを目標とし、その実現に向けて生物多様性調査を厳格に行っています。