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Aramco

非金属というソリューション

より軽く、より長持ちする素材の開発・展開

アラムコは、エネルギーと素材という喫緊の世界的課題に対処する技術ソリューションの開発を推進しています。とりわけ著しく貢献している分野に、非金属素材のイノベーションが挙げられます。

なぜ非金属素材が重要なのか?

世界中のどの産業にとっても、腐食は大きな問題です。腐食に関わるコストだけでも、全世界で2.5兆米ドルに上ると推定され、これは世界のGDPの3.4%に相当し、企業、政治、社会に大きな影響を及ぼしています。従って、先端プラスチック開発などの非金属ソリューションは、この問題を軽減する大きな役割を果たすことができます。

非金属プログラムの達成目標

抑制

腐食を解消または最小限に抑えることで、パイプなどの製品の安全性、完全性、信頼性を向上させます。

奨励

非金属素材製造に参入する企業への投資奨励は、雇用創出を下支えします。

最小化

腐食、保守、部品交換にかかるコストを削減することで、ライフサイクルコストを最小化します。

促進

石油から石油化学製品への転換を促進します。

削減

ライフサイクル全体を考慮しつつ、二酸化炭素排出量を削減します。

パイプライン管理センターは、最高水準での安全性、信頼性、効率、そして環境への配慮をもって、アラムコの炭化水素を輸送することを使命としています。

金属腐食問題の解決につながること、その軽量性や耐久性、コストパフォーマンスから、非金属素材は石油・ガス産業で中心的役割を担うことができます。腐食のリスク排除、そして敷設時間の短縮やライフサイクルを通したコスト削減の面で実績を上げてきた非金属素材は、パイプラインでは過去5年間だけでも全長1万kmを超え、高圧の石油、ガス、水といった当社の在来型・非在来型資産に対する多面的応用など、社内での非金属素材の使用は加速度的に増加しました。

石油・ガス業界での成功をばねに、私たちは非金属分野の事業戦略を拡大しました。新たに対象としたのは建築と建設、自動車、梱包材と再生可能エネルギーの4部門です。

5大産業にまたがるアラムコの成長機会

石油・ガス

石油・ガス分野における非金属活用の例には、陸上・海中配管、タンク、容器、冷却塔、バルブ、ポンプ、そして二次的海洋構造物があります。これらの重点分野において、強化熱可塑性樹脂パイプ(Reinforced Thermoplastic Pipe:RTP)、強化熱硬化性樹脂製品(Reinforced Thermosetting Resin:RTR)、ライニング、ダウンホール用ライニング済み管、非金属コンプリーションツール、タンク、バルブ、冷却塔、ポンプなど様々な製品を導入してきました。石油・ガス部門での導入実績は1万km以上に達し、ダウンホール関連の非金属製品を採用する油井は750井以上あります。

建築・建設

建築・建設分野では、複合鉄筋、ポリマーコンクリート、構造体部品、床材、建物付属設備、複合外壁材などの非金属素材が大きく成長する可能性を秘めています。これまでに75種類以上の応用事例で使用した樹脂の量は9万トンを超え、その中には2600万メートル分におよぶガラス繊維強化ポリマー(Glass Fiber Reinforced Polymer:GFRP)鉄筋の使用も含まれます。この鉄筋は樹脂材料をガラス繊維で強化したもので、従来の金属製鉄筋を代替する製品です。

自動車

自動車産業は、すでに非金属製品を幅広く導入しています。たとえば、炭素繊維強化プラスチックはスチールより軽量で、燃費の向上、車両性能の改善、エミッション排出の削減を実現します。当社は、炭素繊維とポリマーの技術開発と奨励を進め、炭素繊維を量産する場合の製造コストを抑える方法も模索しています。

包装

梱包産業では、プラスチックパレットやコンテナなど、ポリマーの分解性やリサイクル性に紐づく非金属のソリューションが役立つ様々な機会があります。最初の取り組みとして、将来的に社内で使用する木製パレットをプラスチック製のものに置き換えることを計画しています。これまでに導入したプラスチック製パレットは1万枚、ドラム缶やバケツ類は4万台を超えています。

再生可能エネルギー

今後、非金属素材の拡大が期待されるのは、太陽光発電(PV)パネルのガラスをポリマー素材に置き換えることです。この代替素材にはガラスと同様またはそれ以上の性能があり、なおかつ軽量で施工時間の短縮化が見込まれ、ガラスよりも高い衝撃強度を持つなど、数々の点で優位性を発揮します。現在、最も期待できる樹脂素材としてエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリプロピレン(PP)とポリカーボネート(PC)の3種類を中心に検討しています。

アラムコの非金属探求の鍵となる実績

クライス油田

非金属素材の活用は当社にとって目新しいことではなく、20年以上にわたり、大半の石油・ガス施設で非金属パイプを使用し、プラントでは、大部分のユーティリティ用途で非金属を採用することが標準となっています。しかし、この素材の活用を新たなレベルへと引き上げたのは、2015年のクライスメガプロジェクトでの強化熱可塑性プラスチックパイプ(RTP)の大規模導入でした。

RTPは溶接不要で、パイプを糸巻状にできるため、従来の配管敷設に比べると施工が容易です。一例を挙げると、通常の炭素鋼製パイプの敷設は70日かかるのに対し、クライスRTPフローラインの接続と建設期間は2日未満に短縮されました。石油・ガス産業のゲームチェンジャーとしての可能性を秘めるRTPは、従来品と比較して耐久期間が長く、コスト効率が良く、短時間での施工が可能で、軽量化されています。これら全ての特性は、エネルギー効率に優れた集中的な施工プロセスと、二酸化炭素排出量の削減に適しています。

非金属イノベーションセンター

石油・ガス分野での成長機会をフルに生かすべく、アラムコは非金属分野のイノベーションを加速させるべく、世界中でパートナーシップを構築しています。研究機関接合・溶接研究機関(The Welding Institute)とアブダビ国営石油会社(Abu Dhabi National Oil Company)と共に英国ケンブリッジに設立した非金属イノベーションセンター(NIC)では、学術界、石油・ガス企業、複合材料メーカー、研究機関などが結集し、製品開発、試験、商品化の流れを加速させるべく取り組んでいます。

建築・建設部門では、アメリカ、ミシガン州に拠点を置くアメリカコンクリート工学協会(American Concrete Institute:ACI)と共同で非金属建築材料センター・オブ・エクセレンス(NEx)を設立し、同部門における非金属の素材・製品の浸透を図っています。この営みを通じて、新規市場への参入を図るとともに、非金属製品の世界展開に向けた戦略の推進を目指します。

2022年初頭には、非金属分野の新たなセンター・オブ・エクセレンスとして、中国・北京にNEXCELを設立、中国建材アカデミー(China Building Materials Academy:CBMA)と共同で建築・建設業界における非金属品の普及に取り組んでいます。NEXCELは建築・建設分野への非金属技術の浸透を拡大、加速させるためのプラットフォームとして活用されます。

戦略的協働

アラムコは、サウジアラビア国内での非金属技術活用のパイオニアとして、国内外のサプライヤーや研究機関との世界的協働を通して、非金属品の開発と活用を加速させています。対象を絞った強力な協働を通じて、国内をはじめ湾岸諸国、そして世界的に非金属分野のエコシステム移行を推進しています。世界各地の製造業者や研究機関38ヶ所以上との協働により、5部門全てにおいて新たな製品開発を進めています。現在進行中の研究プロジェクトは40件以上あり、学術機関や研究機関、技術団体、製造業者、そして業界リーダーなどがそれぞれの垣根を越えて取り組んでいます。その結果として75件以上のプロトタイプが研究機関や業界規模で開発され、特許数は申請、認可を合わせ50件以上にのぼります。

ローカライゼーション面では、サウジアラビア国内に非金属業界を確立することで経済効果を生み出し、成長の促進を目指します。対象の5部門で進行中のローカリゼーション投資プロジェクトは127件あり、そのうちの26件はサウジアラビア国内産業奨励プログラム(iktva)を通じて実現しています。さらにはサルマン国王エナジーパーク(SPARK)に非金属ハブを創設し、数々の非金属製品・サービスを対象とする世界レベルの非金属製造ハブを目指しています。

非金属素材とその未来

私たちは、非金属素材の成長、発展、活用は、石油産業にとどまらず、世界経済を変革する可能性があると確信します。自動車や再生可能エネルギー産業での活用から、都市計画、都市開発まで、より費用対効果が高く、耐久性、持続可能性があり、長期間使用できる素材への需要は大きく伸びるでしょう。

ダウンストリーム事業を多様化し非金属素材へ参入する機会を明白にした今、当社は研究開発の促進、新技術・製品の導入、世界主要研究機関との連携を通して、この分野がもたらす好機を活かせる立場にあるのです。

炭素繊維ソリューション

炭素繊維は驚くべき強度と汎用性を持ち、多くの産業で理想的な製造材料となっています。

世界の研究拠点

技術革新を生み出すには、優れたアイデアや人材、そしてパートナーが不可欠です。

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