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閣下を始め、ご臨席の皆様、おはようございます。
皆様とともにこの場にいられることを嬉しく思います。エネルギー市場監督庁の皆様のおもてなし、そしてこの大切な年次会議の開催に感謝を申し上げます。
リーダーシップ、才能、そして飽くなき有効策の追求を通じて理念を実現してきたシンガポールは、非常に高い評価を得ています。これから説明申し上げるように、世界のエネルギー移行にとっての重要な教訓がここに含まれています。
また、アジアが再び世界経済の中心地となっている今、この地域全体から人々が集まっているのも素晴らしいことです。今やアジアは世界のGDPのほぼ半分を占めると同時に、世界人口の半数も占めているのです。
今年だけでアジアは世界の経済成長の約6割に貢献すると見られています。そして、アジアは世界のエネルギー供給の半分以上を消費しています。
重要なのは、その消費量の84%が依然として従来型のエネルギーで賄われていることです。つまりアジアは、世界経済、共通の気候変動対策、そして何十億もの人々の希望と夢にとって極めて重要な役割を担っているのです。
そのため、アジアの優先事項が世界のエネルギー移行計画においても同様に重要な役割を果たしていると考えるのは普通のことです。しかし、シンガポールの偉大な指導者である故リー・クアンユー氏が述べたように、現実は厳しく、その考えは間違いです。
今世紀はアジアの世紀かもしれません。しかし、アジアの意見や優先事項は、より広範なグローバルサウスのそれと同様に現在の移行計画の中では見えにくく、全世界がその結果の影響を受けつつあります。移行の進捗は多くの人の予想よりもはるかに遅く、はるかに公平性に欠け、はるかに複雑です。
特に目立つのが現実世界との3つのギャップです。
第一に、石油使用分野が大きく異なることが問題です。実用的な代替エネルギーを現在利用することができる唯一の主要分野は、(アメリカ、カナダにおけるいわゆる)軽量車両のみです。電気自動車は確実に前へと進んでいます。しかし15億台近く走っている自動車のうち、電気自動車はわずか5,700万台、つまり4%未満です。
その低い普及率でさえ、ほとんどがアメリカ、中国、EUの豊かな国に限られており、さまざまな政策、補助金、刺激策によって支えられているのが現状です。それ以外の地域、特に人口とエネルギー需要の増加が見込まれるアジア、アフリカ、ラテンアメリカでは、電気自動車は大きく遅れをとっています。
消費者は一般的に価格とインフラの問題で悩む一方で、バッテリーの充電に使用される電力が、異なるエネルギー源に由来することをますます理解するようになっています。アジアでは電力の70%近くが依然として従来型のエネルギーで賄われており、風力と太陽光による電力は12%に過ぎません。
さらに、一人当たりの電力消費量は先進経済諸国の10分の1です。そのため電気自動車への電力供給は、この地域でますます困難になる可能性があります。また、初期の富裕層ユーザーというニッチ市場がほぼ満たされた今、電気自動車の販売は一般市場で逆風に直面し始めています。
さらに、電気自動車の進捗は世界の石油需要の残りの75%には一切関係がありません。重量品輸送や石油化学などの大規模分野では、石油とガスに代わって経済的に成立する代替エネルギーはほとんど存在しません。
第二に、地理的地域の違いも問題です。確かにEU、米国、日本など一部の成熟した経済圏では石油の伸びが頭打ちになっていますが、依然として大量の石油が消費されています。
米国の石油消費量が一人当たり年間約22バレル、EUが約9バレルであるのに対して、ベトナムは2.4バレル、インドは1.4バレル、アフリカはわずか1バレルです。そのため、国民経済の成長と生活水準の向上に伴い、グローバルサウスの石油需要は長期にわたって大きく伸びる可能性が高いのです。まさに、先進国が何十年にもわたって享受してきたのと同じように。
第三に、予測が異なることも問題です。ほとんどのアナリストは、ある時点で世界の石油需要の伸びが止まったとしても、需要全体が急激に減少することはないだろうと予測されています。そしてその段階の後には、一定量の需要がある段階が長く続く可能性が高いでしょう。
そうであれば、2050年までに現実的にまだ日量1億バレル以上が必要となるのです。その頃までには石油の日量がわずか2,500万バレルに落ち込むだろう、あるいは落ち込むに違いないという一部の予測とは、まったく対照的です。毎日7,500万バレルが不足すれば、安全保障と購買力に壊滅的な打撃となるでしょう。
予測と現実の間にはすでにかなりのギャップがあり、十分な確信を持つことはできませんが、世界的なエネルギー移行に数兆ドルが投資されているにもかかわらず、石油需要は史上最高水準にあります。ガス需要も2000年から7割近く伸びています。
実際に私たちが話題にしているのは、エネルギー移行というよりエネルギー追加ということになります。つまり、従来のエネルギーを何らかの著しい方法で置き換えるのではなく、代替エネルギーでその成長の大部分を賄うだけのことです。
それにもかかわらず、現在の移行計画はこの現実を無視し続けています。これこそが、最も有効であると約束された三つの中核分野で成果を上げることができなかった理由です。
一つめは、手頃な価格のエネルギーです。例えば、ヨーロッパの電気料金は、再生可能エネルギーへの移行にもかかわらず過去20年間に多くの国で3倍から5倍も上昇しました。
二つめは、進捗の大きな遅れです。電気自動車の普及率の低さについては述べましたが、風力と太陽光を合わせても世界のエネルギーの4%未満しか供給できていません。
そして三つめは、誰にとっても移行が高くつくことです。2050年までに全世界で100兆ドルから200兆ドルが必要になるという試算があります。開発途上国では毎年6兆ドル近くが必要になる可能性があります。
さらに、途方もない額の初期設備投資が必要となる移行では、よりニーズの高い開発途上国で資本コストが2倍以上になります。また、後発開発途上国の場合、多くの国で移行だけに毎年GDPの最大半分を費やす必要があるとすれば、未来の見通しはとりわけ暗いものとなります。
クリーンエネルギー投資の最近の伸びのほとんどすべてが先進経済諸国と中国に集中しているのはこのためです。言い換えれば、グローバルノースにおける進捗をよそに、グローバルサウスには新エネルギーに大規模な投資をする余裕はありません。多くの国々が発展に向けた道のりのスタート地点に着いたばかりであれば尚更です。
実行不可能な上に経済的に負担しきれない移行計画を押し付けようとしても、経済発展や社会的結束さえ脅かす結果になるだけです。そして、極めて炭素集約的な石炭の需要を代替どころか削減さえできないのは、現在の計画に対する大きな打撃であると言えるでしょう。石炭への需要は過去最も高いレベルにあるのです!
こうした多くの問題のため、世界が手頃な価格、移行の速度、あるいは排出削減の目標を達成できる目処は立っていません。そのため世界には、有効に機能する移行計画が早急に必要です。
その再度の立ち上げは、どのようなものになるのでしょうか?まず始めに、世界がほぼ一夜にして従来型エネルギーの需要を中途半端な代替品で代替できるという仮定を、計画立案者が捨て去る必要があります。グローバルサウスにおいては特にそうです。
この思い込みが、こうした重要な従来型エネルギー源への投資を著しく阻害しています。はっきりと申し上げます。今後数十年間にわたって、あらゆるエネルギー源が必要とされるでしょう。また計画立案者は、単一の計画で200を超える国々のニーズを満たすことができるという信念も捨てなければなりません。
その思い込みは、電気のない村でWi-Fiのパスワードを求めるようなものです!それぞれの国は、自国に適したスピードと方法で気候変動対策目標を達成できるエネルギーミックスを選択するべきです。
そして、そのような現実の優先事項、特にグローバルサウスの優先事項が、世界的な移行が成功するためのDNAとなる必要があります。さらに言うまでもなく、いつの日か価格、性能の面で張り合える新エネルギー源と低炭素技術の開発を、世界が加速させる必要があります。
そうすれば消費者は、市場を歪める義務付けや補助金や関税なしでも、より低炭素な製品を受け入れることができるでしょう。しかし最大の焦点は、現在利用できる手段に置かれるべきです。これは開発途上国が必要とし余裕を持って購入できる、石油・天然ガスなどの実績と信頼のあるエネルギー源への不可欠な投資を奨励することも意味します。
それはさらに、従来のエネルギー源に関連する温室効果ガス排出の削減を優先することも意味します。例えば、石炭から再生可能エネルギーへのシフトによって、米国の発電によるCO2排出量は確実に削減されました。
しかし、石炭から天然ガスへの転換が削減分のほぼ3分の2を占めています。そしてそれは、より効率的なエネルギー使用、循環型炭素経済、CCUSといった、比較的簡単に達成できる目標の追求につながります。
このイデオロギーにとらわれないアプローチでは単純に、その影響がより大きく、コストが許容可能で、合理的な時間枠に収まり、エネルギー源や技術を問わない、計画的な排出削減が優先されます。
それは私が多彩なエネルギー源、多様な速度、多次元のアプローチと呼ぶものであり、ごく一部の国だけでなく、すべての国の実際の安全保障、購買力、持続可能性の優先事項に対応します。
アジアを中心に据えた移行計画2.0
ご臨席の皆様。ますます非現実的で高価になる移行案を供されれば供されるほど、世界中のエネルギー消費者は更に不満を感じるようになっています。エネルギー消費者が切望するものは、私たち全員が望むネットゼロの未来への情熱を、全員が余裕を持って手に入れられる現実、そして飽くなき有効策の追求へと、結びつけてくれるものです。
これがリー・クアンユー氏の考え方でした。この考え方を通じて、不可能なミッションを可能なミッションに変えることができると、私は信じています。
ありがとうございました。
【メディア連絡先】
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