アラムコJCCP共催シンポジウムにおける アハマッド O. アルコウェイターの挨拶

皆さま こんにちは。 

一年ぶりに東京に戻ってきまして、引き続き皆さまと実り多い対話を行えることを嬉しく思っています。

世界が日本のイノベーションに注目していますが、中でもサウジアラビアはとりわけ大きな期待を寄せています。ですので、日本の皆さまとパートナーを組むことに私たちは常に前向きであり、お互いに多くを学べると信じています。

サウジアラビアと日本のより緊密な協働と、本シンポジウムの開催に共に取り組んでくださっている、共催者の一般財団法人 国際石油・ガス・持続可能エネルギー協力機関(以下、JCCP)に感謝の意を表します。 

30年ほど前になりますが、新規大規模施設の開発のためエンジニアとして初めて東京を訪れたときのことが思い出されます。この施設が後に、アラムコ初の非在来型ガス処理施設となりました。

また今の時季は食欲の秋、全国が色づき豊かな実りを楽しめる季節でもあるので、それも楽しみにしています。

さて、エネルギーに対する世界の「食欲」は、初めて東京に来た頃に比べると大きく変わってきていますが、炭化水素の需要は明らかに、この先数十年間変わらず継続することでしょう。

炭化水素は、私たちの開発目標達成のみならず、サステナビリティにおける目標の達成においても非常に重要です。

なぜなら、信頼性が高く経済的に実現可能なエネルギーの供給は、活気があり、イノベーションに満ちた経済の創成に不可欠だからです。

そして、信頼性のより高い新しいエネルギーソリューションを開拓し、効率性を更に高めた従来のエネルギーソリューションを推進していくには、世界レベルのイノベーションが必要です。

信頼性と効率性を高めていくことは、アラムコのテクノロジー&イノベーション戦略の根幹となる二本柱です。そしてそれを支えているのが、日本とのかけがえのないパートナーシップです。

昨年の訪日以来、より低炭素な水素や合成燃料といった新たな分野での共同作業が進んでいます。これらを通じて私たちは、信頼性、効率性、そしてサステナビリティ面における目標を産業規模で達成すべく取り組んでいます。

そしてこの規模の大きさこそ、イノベーションの真価を発揮させる決め手となっています。アラムコには、他に類を見ない事業規模を活かして新技術を徹底的に検証し、その中から有用なものを広く展開するという当社ならではの強みがあります。

つまり、ここ日本で開発された数多くの技術を含め、様々な技術を採用し、各事業活動の効率改善を図っているのです。

私たちは、新エネルギーと従来型エネルギーとの別にかかわらず、様々なエネルギー源から供給するエネルギーのコストと炭素排出量の低減に全力で取り組んでいます。

しかし、世界的には炭化水素への投資が不足しており、これが経済を圧迫しています。世界経済の活性化なくしては、世界的な開発目標もサステナビリティ目標も達成できません。

私たちのコラボレーションがいかに重要であるかは、この点にあります。つまりイノベーションを通じて、エネルギー需要と炭素排出量低減のいずれにも応えていくということです。

代替ソリューションが大幅な進歩を遂げてはいますが、2020年代初頭に経験したエネルギー危機は、その代替ソリューションの多くがまだ成熟していないことを物語っています。

一方、世界のエネルギー需要は減ることがありません。むしろ、かつてないほどに旺盛です。

しかし、投資が不十分であることが結果として価格、炭素排出量の両面で非合理的な代償を払うことになります。

ですから、私たちがとるべき次のステップは、テクノロジー&イノベーションの取り組みを拡充すること、そして同時にエネルギー移行の実情を世界に示すことなのです。

そのエネルギー移行は、多様なエネルギー源、スピード、そして多面的なものでなければなりません。

多様なエネルギー源、つまり、新エネルギーと在来型エネルギーの両方において長期的投資を促す移行です。

多様なスピードとは、すなわち低所得や発展途上の国々における実情により配慮し現実的な速度で展開を進める移行です。

多面的な移行とは、食品や素材産業他分野、あるいは自然環境の回復などにおける気候変動への対応と環境保護の数々の機会を視野に入れた移行です。

こうした移行を進める中で、エネルギー業界全体を通じてコストと炭素排出量の両方を低減し、かつ投資利益率を上げていくという私たちの目標と実績を世に示していくことができます。

このアプローチを通じて、アラムコはすでに原油の生産としては業界屈指の低コスト、低炭素強度を実現しています。

今後も継続してイノベーションを推進し、減退することのない世界のエネルギー需要を満たしていかなければなりません。

炭素強度のより低い水素や合成燃料などの領域でこの先数十年間の炭化水素市場を形成していくようなイノベーションを目指します。

もうひとつの領域は、石油、ガス、あるいはCO2を原料とする新素材です。

そして、新素材のデザインや触媒テクノロジーには大きな期待を寄せています。これは人工知能(AI)の活用で大きく成長する分野だろうと考えています。

AIはまた、特に産業規模で応用することにより、生産性を飛躍的に向上することもできます。アラムコは今年の初めに、当社初となる独自の産業用大規模言語モデルAramco MetaBrainの運用を開始しました。

これにより、長年にわたり培われた当社の専門知識をオペレーターや技師、エンジニアが容易に活用できるようになるでしょう。

当社のAIモデルはすでに、豊富な独自のフィールドデータから学習し、操業を支えています。さらに、最近運用を開始したNVIDIA社製SuperPod Clusterの併用により、油・ガス層内の圧力予想といったかなり複雑な技術的課題にもAramco MetaBrainで以前より効率よく取り組めています。

新エネルギー、新素材、デジタル技術、そしてAIに投資を行うことで、依然とした投資不十分な状態によるリスクを低減するとともに、世界的問題の解決に向けたやりがいのある課題に取り組む、トップクラスの若い人材を多く採用することも可能になります。

代替エネルギー技術がその成熟に向けて成長を続ける間、私たちは輸送や発電分野などを含め、業界全体の効率改善に全力を傾けるべきです。

それは、エネルギーの効率改善とサステナビリティへの投資が、先ほど述べました多様なエネルギー源への移行という目標の達成につながるからです。

そして私たちは、これまでに実現してきた成果や成功実績、あるいは成長と発展を可能にしてきた石油・ガスの価値について、素直に誇りに思うべきと考えます。

私は、アラムコとJCCPとの協働から生み出されたこれまでの実績を、誇りに思っています。何十年にもわたるコラボレーションを通じて開発した、画期的な高過酷度流動接触分解(high severity fluid catalytic cracking: HS-FCC)技術は、日本とサウジアラビアという二大国の深く広い関係を雄弁に物語る一つの象徴でもあります。

これら次のステップを通じて、さらなる前進が促されることでしょう。共同作業を続けることで、両国にとって、また世界にとってより多くの機会をさらに創出する、私たちはそういう理想的な関係にあると固く信じます。

日本はちょうど収穫の秋を迎えようとしているように、本日のシンポジウムで私たちはこれまでのコラボレーションの実りを喜びたいと思います。

目の前の課題を軽視することはできませんが、私たちには世界トップレベルの秀逸な人材と、世界的に影響力を持つ財産を構築する機会に恵まれているのです。

これまでの成果を素直に喜び、そして今後私たちが共に実現するさらなる飛躍を、大きな期待をもって見守りたいと思います。

ご清聴ありがとうございました。

【メディア連絡先】

本件に関するすべてのメディアからのお問い合わせは、アラムコのメディア担当部署が承ります(英語)
Email: media.inquiries@aramco.com

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