
アラムコは石油・ガス生産を主要事業とする大手エネルギー・化学企業です。映像で紹介された技術はまだ開発段階です。
世界は今、岐路に立っています。
毎年、エネルギーは経済成長を支え、何百万もの人が貧困から脱出し1 、何十億という世界中の人々がより質の高い生活を実現しています。しかしその一方で、世界人口の半数は1日7ドル未満で暮らしています2 。発展途上国に生きる世界の8割以上の人々は、その新興経済において、先進国が日常的に享受している豊かさを求め努力を重ねています3。
成長し続けることは必要です。なぜなら、すべての人により良い生活の機会が与えられるべきだからです。しかし生活の向上をもたらす成長が、同時に地球環境に負荷をかけることになり、現代社会における重要な課題をもたらしています。人間のニーズと自然環境のニーズの均衡をとるにはどうすればいいのでしょうか。
アラムコは、イノベーションが人類最大の課題を解決する鍵を握っていると考えます。イノベーションによってエネルギー移行が現実的かつ安定した形で、秩序正しく実現すると信じています。
だからこそ私たちはCO2回収・貯留(CCS)などの技術への投資を積極的に行っています。こうした技術が、石油・ガスから化学品やスチール、セメントなど低炭素化が困難な産業における排出量抑制には不可欠です。
アラムコはCCSソリューションの新市場への参入を計画しています。 当社の事業の規模、集中、統合は、CCSの開発、試験、展開を大規模に進めるうえで大きな強みです。
時間もまた重要な要素です。2022年には世界最大級のCCSハブをサウジアラビアのジュベイル工業都市に建設するパートナーシップ計画を発表しました。

CO2回収の大規模展開

低炭素な未来に向けて加速
炭素回収における約束の実現
排出量削減
二酸化炭素(CO2)を回収し貯留する過程には、大きく3つの段階があります。それは回収、輸送、そして地中への注入です。岩盤に隔離されたCO2は、長期間そこで貯留することができます。
また貯留に加え、回収したCO2をプラスチックや燃料、化学品などの原料として有効利用することも可能です(CO2の回収・利用)。
2060年までにネットゼロを実現するというサウジアラビアの野心的目標に向けた戦略において、CCS技術はその重要な一翼を担います。 同国では、2035年までに4,400万MtpaのCO2回収を目指しています4。

CCS開発の推進
世界のCCSとCCUS能力を拡大できるかどうかが、脱炭素化への世界的な取り組みの成功の鍵を握ると考えられています。プロセスとしては十分に確立されていますが、インフラ建設にかかる膨大なコストが依然として課題です。
この障壁を乗り越えるために、税政優遇措置や財政援助を行う政府も増えつつあります。2021年には100ヶ所以上の新規CCUS施設建設が発表され、2023年にはさらに31件のプロジェクトが発表されています。近年のプロジェクトは、パートナーシップや輸送・貯留インフラの共有、また水素プロセスとの緊密な連携などの面で顕著に強化されています。
アラムコは、CCSの専門知識と資源の点で優位に立っています。ジュベイルのようなハブ施設は、産業活動による温室効果ガス排出量に対する地域的な削減努力を加速させるとともに、世界の産業界に対しては、社会が必要とするエネルギーや素材の供給がもたらす影響を低減するモデルを示すことを目指します。

アラムコは2050年までにスコープ1およびスコープ2の温室効果ガス排出量ネットゼロ達成を目標に、2035年までにCO2換算で1,100万トンの回収を目指しています。
アラムコのサステナビリティ・レポート2022より主なポイント4
4,150万ドル
2022年のCCS研究開発費
1,100万Mtpa
2035年達成を目指すジュベイルのCCS目標
4,400万Mtpa
2035年達成を目指すサウジアラビアのCCUS目標
238 MtCO2
ハウイヤ天然ガスプラントにおける2022年のCCS

「低炭素」燃料のイノベーション
それが、2030年までに年間最大1,100万トンの「低炭素」アンモニア生産を目標としている理由の1つです。より小さい体積でより多くのエネルギーを貯蔵できる低炭素アンモニアは、より効率的に水素を長距離輸送できる方法です。

アラムコではパートナー企業と協力し、すでに2度にわたって水素発電所の燃料用として第三者認証済みの低炭素アンモニアを韓国および日本へ出荷しました。
今後もCCSやその他の低炭素技術を通じて、低炭素水素と低炭素アンモニアの大規模展開を目指します。
環境分野におけるリーダーシップ
世界最大級のエネルギー会社として、アラムコはエネルギー移行における自らの役割を認識しています。未来に向けた野心的な目標を掲げる一方で、今、目に見える改善を実現しなければなりません。
2022年には、2035年および2050年の達成目標に対し、アラムコが独自に定めた排出量削減の5つの手法すべてにおいて進展が見られました。エネルギーの効率化やCCSもその一部です。
また、ハウィヤ天然ガス・パイロットプラントでCCSを活用し約238MtのCO2を回収し、85km離れたウスマニヤ油田の油層に隔離しました。これにより、2015年以降、この油層にCO2約1,570Mtを貯留したことになります。

2022年には、SLB社、Linde社とのジュベイルのCCSハブ共同開発合意書締結を通じて、政府の奨励策に支えられながら、CCSを迅速に大規模展開するという私たちの目標が具現化されました。
また、地域の長期的経済成長を支えることも目標の1つです。CO2回収分野のエンジニアや環境専門家、研究者や科学者、熟練技術者など専門職に対して質の高い雇用を創出するとともに、その将来的な存続にはCO2排出量削減が欠かせない既存産業の維持にも貢献していきます。
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たった一つのシンプルな疑問 –どのように?– この疑問が、私たちのすべての行動の原動力です。
1 How does energy impact economic growth? An overview of the evidence Todd Moss and Jacob Kincer, 2023 (英語)
2 World Bank Blogs, December 2022 (英語)
3 United Nations Conference on Trade and Development, November 2022 (英語)
4 Aramco Sustainability Report 2022 (英語)