
AIとビッグデータ
人工知能(AI)――コンピュータやロボット、その他の機械が意思決定を行い、計画立案を支援し、コミュニケーションを改善し、創造性を高めるという、急速に進化している能力――は、すでに世界を変えつつあります。
例えば、機械学習はAIの一種であり、プログラムがデータ内のパターンを分析・識別し、指示されることなくパフォーマンス向上を目的とした行動をとります。その結果、機械は自動的に学習し、能力を向上させていきます。
ビッグデータの台頭
AIの恩恵は、ビッグデータの登場により近年急速に拡大しています。ビッグデータとは、膨大な量の多様なデータが高速で生成され、収集・蓄積された巨大なデータセットのことです。これらのデータセットを処理・分析することで、AIアルゴリズムは今や複雑な問題の解決を支援しています。そして、AIとビッグデータを組み合わせて活用することで、その応用範囲はほぼ無限に広がります。 製造業では、AIを活用して製品設計、在庫計画、物流を改善することができます。 オンライン上では、バーチャルアシスタントや広告から、言語翻訳ソフトやサイバーセキュリティに至るまで、あらゆるサービスを支えています。交通情報では、AIアルゴリズムがカーナビシステムを稼働させ、交通の流れを最適化することで渋滞の軽減に貢献しています。これらをはじめとする現代生活の多くの側面で、AIはすでにコスト削減、時間の無駄の削減、業務効率の向上に活用されています。
当社のデジタル・トランスフォーメーション
アラムコでは、AI、ビッグデータ、そして産業型モノのインターネットIoT(IIoT)、産業プロセスを強化するためにデジタル接続された相互に関連するコンピューティング・デバイスのシステムの力を活用し、油・ガス層管理から電力消費に至るまで、当社の事業運営の多くの側面を強化するとともに、従業員の安全性の向上から炭素強度の低減に至るまで、様々な目標の達成を支援しています。
AIは当社のデジタル・トランスフォーメーション・プログラムにおける重要なツールであり、意思決定プロセスの分析と改善、および事業パフォーマンスの向上を図るため、革新的なスマートツールやその他のデジタルソリューションの設計、開発、導入を継続しています。AIとビッグデータの利点を最大限に活用することで、信頼性が高く手頃な価格のエネルギーに対する世界的な需要の高まりに応え続けることを目指しています。
AIとビッグデータの活用方法
AIおよびビッグデータソリューションは、エネルギー分野における幅広い業務を強化し、効率性と信頼性の向上をもたらします。アラムコでは、デジタル化を推進するエネルギー企業のリーダーとなることを目標としており、急速に発展する産業用AIの世界は、この目標達成の鍵となります。以下に、当社がこれらの先進的なデジタル技術の力を実際に活用している6つの事例をご紹介します。

クライス油田
当社最大級の油田の一つであるクライス油田では、500基以上の油井を監視するために4万個のセンサーを導入し、アラムコの在来型油田としては初の「高度プロセス制御(APC)」を構築しました。ビッグデータ分析、機械学習、スマートセンサー、ロボティクスにおける最新の進歩を活用することで、クライス油田では数多くの大きなメリットがもたらされています。 その例としては、ボイラーの燃料ガス消費量を削減するための社内開発AIソリューションの構築、ロボティクスを活用して保守作業の安全性・コスト効率・生産性の向上、そして光ファイバーをセンサーとして活用した、漏洩検知機能を備えるパイプライン管理システムの導入などが挙げられます。これらのデジタルソリューションの導入により、原油生産量を15%増加させ、トラブルシューティングの対応時間を100%短縮することに成功しました。

アブカイク石油施設
70年以上にわたり操業を続けているアブカイクは、アラムコ最大の石油処理施設であり、世界最大級の原油安定化(原油を安全に貯蔵・輸送できる状態にすること)施設の一つです。アブカイクにおけるデジタル・トランスフォーメーションは、三つの主要分野で大幅な運用改善をもたらしました。第一に、ロボットやスマートドローンを活用して日常業務の約3分の1を遂行することで、現場での手作業による点検への依存度を低減しました。 第二に、機械学習とAIアルゴリズムの導入により、石油安定化プロセスの自動調整が可能となり、発電性能の向上と施設におけるCO₂排出量の削減につながりました。第三に、データ、分析、予測モデリングの活用拡大により、当社のエンジニアは潜在的なシステム障害をより効果的に予測できるようになりました。

ファディリ・ガス処理施設
2024年10月から2025年4月にかけて、当社は、数々の賞を受賞している東京に本社を置くテクノロジー企業、横河電機株式会社の子会社であるYokogawa Middle East & Africaおよび横河デジタルと緊密に連携し、ファディリ・ガス処理施設に画期的なAIシステムを導入しました。この実証プロジェクトでは、酸性ガス除去(AGR)作業の自動化と改善を目的として横河電機が開発したAIソリューションが導入されました。
強化学習AIアルゴリズムを用いたこの技術は、サワー(硫黄分の高い)ガスをスイート(硫黄分が少ない)ガスに変換する既存のシステムの性能を監視・改善するように設計されています。詳細な評価は現在も進行中ですが、この試験運用はすでに期待を上回る成果を上げており、アミンおよび蒸気の使用量を10%~15%削減し、電力使用量を約5%削減するとともに、プロセスの安定性が向上し、オペレーターによる手動介入の必要性も減少しました。
この技術は現在、ファディリ・ガス処理施設で恒久的に導入されており、2025年後半から2026年にかけて、アラムコの他の施設においても追加導入の適正評価を進めています。
フレア監視
フレアリングとは、パイプラインや処理施設内の圧力上昇によって引き起こされる炭化水素ガスの放出および燃焼のことです。当社のエンジニアは、ビッグデータを活用してガス処理システム全体を可視化することで、フレアリングの原因を迅速に特定し、解決策を導き出しています。当社は18,000件ものデータソースから情報を取得しており、これによってフレアの監視と予測が可能となっています。 このリアルタイムデータを、さまざまなビッグデータ処理技術を用いて構築されたモデルと比較することで、当社が独自に開発したAIシステムは、施設がフレア目標値を超過する時期を予測し、事前に是正措置を講じることができるようになります。ビッグデータとAIの活用により、当社は総生ガス生産量の1%未満という業界トップクラスのフレア排出量を維持しています。

貯留層モデリング
貯留層シミュレーションでは、最先端のデジタル可視化ツールを用いて油・ガス層とその管理上の課題をモデル化し、最適な開発計画を実現するための意思決定を支援しています。 例えば、アラムコの貯留槽・堆積盆地シミュレーターである「TeraPOWERS」は、ビッグデータを活用し、新たな掘削・生産データによって継続的に更新されるモデルを用いて、アラビア半島の炭化水素システム全体をシミュレーションしています。その後、高度なアルゴリズムがこのデータを分析し、これらの炭化水素資源へのアクセスを改善するのに役立てられています。
カメラ式坑井間隔設定システム
この革新的なプロジェクトでは、産業型モノのインターネット(IIoT)に接続されたプラットフォームを活用し、坑井底部でドリルビットを回転させるために使用される重要な構成要素であるドリル・ストリング・アセンブリ(掘削管、スタビライザー等その他関連部材)の配置を自動的に行います。 このプラットフォームは、スマートで防水仕様の高解像度ワイヤレスカメラやその他のセンサーで構成されており、AIや機械学習を活用して、撮影された動画や画像を処理・分析します。これらの技術は、掘削管等の配置を自動化・最適化することを目的としています。これは、新たな油・ガス井を掘削するプロセスにおける重要な工程であり、正しい配置を行うことで、予期せぬ圧力変化によって引き起こされる坑井制御の問題が発生した場合でも、容易かつ迅速にシャットダウンが可能になります。
当社のビッグデータインフラ
アラムコのグローバルな規模と革新的なデジタル技術の活用は、意思決定を高度化し、顧客への付加価値提供に貢献しています。AIとビッグデータを最大限に活用するため、当社はデジタル・イノベーション・センターのネットワークを構築しました。これには以下が含まれます:
第四次産業革命技術(4IR)センター
当社の4IRセンターは、アラムコのデジタル・トランスフォーメーションの一環として、4IR技術の導入を加速させるために設計された世界クラスの試験施設です。4IRセンターは、社内のあらゆる部門から毎日50億件以上のデータを収集し、この情報を活用して、さまざまな革新的なAIソリューションの開発を支援しています。

OSPAS
OSPASは、アラムコの石油供給計画・管理部門であり、当社の事業運営の中枢を担っています。油井、パイプライン、プラント、ターミナルから情報を収集する10万個のセンサーを活用し、OSPASはリアルタイムのデータと分析を用いて、ネットワークを通じた石油とガスの流れを監視・制御することを可能にしています。
上流イノベーション・センター(UIC)
アラムコのUICは、4IR技術の力を活用するための環境を提供しています。AIやビッグデータなどのデジタルツールを活用することで、当社のエンジニアや地球科学者は、計画の微調整、油井内での掘削作業の改善、不要な水の生産管理、そしてCO₂排出量の削減を目的としたソリューションの開発が可能になります。

ダンマン-7
アラムコは、世界最高性能のスーパーコンピュータの一つである「ダンマン-7」を活用し、ビッグデータ分析の力を最大限に引き出しています。このスーパーコンピュータは、詳細な3D地震探査モデルを実行するために必要な膨大な計算能力を提供し、エンジニアによる石油・ガスの発見および回収能力の向上を支援しています。
サプライチェーン管理センター
当社のサプライチェーン管理センターのチームは、サプライチェーンの統合と自動化を通じて、その変革を推進しています。同センターでは、事業中断を未然に防ぐためのリアルタイムアラート、アラムコの世界各地への出荷状況をリアルタイムで追跡する物流追跡機能、およびサプライチェーンプロセス全体を可視化するAIソリューションを活用しています。高度な分析技術により、サプライチェーンの物流が強化され、炭素強度の低減にも貢献しています。