シュルンベルジェ・デジタルフォーラム2022でのアミン・ナセル挨拶

サウジアラムコ社長兼CEO アミン・ナセル

皆さん、おはようございます。

ここ美しいルツェルンでのフォーラムにお招きいただきありがとうございます。

コロナ禍で2年続けて楽しめなかった夏を経て、今年はご家族やご友人と共に休暇を満喫されたことと思います。しかし、秋季が始まった今週、世界的なエネルギー危機により、特にヨーロッパでは、より寒く厳しい冬がやってくることが予想されています。

残念ながら、これまでの対応は、なぜこのような事態に陥ってしまったのかということについての深い誤解をさらけ出しており、この危機が近い将来に収束する見込みはほとんどありません。そこで今朝は、より信頼できる前向きな道筋に脚光を浴びせるべく、真の原因に焦点を当てたいと思います。

歴史家がこの危機を振り返ると、世界のエネルギー政策における警告サインが、ほぼ10年前から赤く点滅していたことに気づくでしょう。長年にわたり、ここにいる私たちの多くが、石油・ガス投資の減少が続くと、世界の供給の伸びは需要に遅れを取り、市場、世界経済、そして人々の生活に影響を及ぼすと主張してきました。

事実、石油・ガス投資は2014年から昨年にかけて、7,000億ドルから3,000億ドル強へと50%以上激減しました。今年に入って見られた増額は、あまりにも少なく、遅きに失し、そして短期的です。

一方、エネルギー移行計画は、非現実的なシナリオや誤った想定が事実と混同されたことによって損なわれてきました。例えば、多くの人々が、あるシナリオを通じて、石油を使用する主な業界がほぼ一夜にして代替エネルギーに切り替わるため、石油需要がCOVID-19前のレベルに戻ることは無いだろうという思考に陥ってしまいました。

実際には、ロックダウン後に世界経済が浮上し始めると、石油需要もガス需要も急回復しました。

対照的に、太陽光や風力はまだ世界の発電量の10%を占めるに過ぎず、世界の一次エネルギー供給量の2%以下にとどまります。電気自動車でさえ、自動車総保有台数の2%に満たず、今では高額な電気料金に直面しています。

おそらく最も有害なのは、コンティンジェンシー・プランニング(緊急時対応計画)は無視しても大丈夫だという考えでしょう。

なぜなら、石油・ガス投資家を非難し、石油・石炭火力発電所を廃止し、エネルギー供給(特にガス)の多様化を図らず、LNG受入基地に反対し、原子力を拒絶するのであれば、その移行計画は確実なものであるべきです。

そうではなく、今回の危機が明らかとしたように、計画は砂の城の連なりに過ぎず、現実の波がそれを押し流してしまいました。そして今、世界中の何十億もの人々が直面するエネルギー・アクセスと生活コストへの影響は、深刻化と長期化が懸念されます。

このエネルギーの危機的状況をもたらした真の要因は、石油・ガスへの過少投資、代替エネルギーの準備不足、バックアッププランの欠如です。しかし、これまでの対応を見ていると、そのことをご存じないのではないでしょうか。

例えば、確かにウクライナ紛争によりエネルギー危機の影響はより深刻化していますが、紛争そのものが根本的原因ではありません。残念ながら、仮に今日(誰もが願うとおり)紛争が止んだとしても、危機は終わらないでしょう。さらに、エネルギー料金の凍結や上限設定は、短期的には消費者の助けとなるかもしれませんが、真の原因に対処するものではなく、長期的な解決策にはなりません。また、増産を望みながら企業に課税することは、明らかに無益です。

一方、ヨーロッパが代替エネルギーや再生可能エネルギー技術を積極的に推進し、ある種の依存関係を減らすことは、単に新しい依存関係に置き換わるだけかもしれません。在来型エネルギーの買い手は、自分たちの短期的ニーズを満たすためだけに生産者が巨額の投資をすることを期待していますが、その期待からはすぐに脱却すべきです。また、業界のモラルを問うことで真の原因から注意をそらしても、問題の解決には全く寄与しません。

だからこそ、世界は真の原因を明確にし、その結果を直視しなければならないのです。例えば、炭素強度の低いガスへの投資が無視され、緊急時対策が軽視され続けた結果、今年の世界の石炭消費量は約80億トンに増加すると予想されています。

これは10年近く前の記録的水準に逆戻りすることを意味します。一方、石油在庫量は低水準で、世界全体で利用可能な備蓄量は、世界需要の1.5%程度にすぎません。

同様に懸念されるのは、世界各国の油田が平均して毎年約6%、いくつかの古い油田では昨年20%以上も減少していることです。このような状況では、生産を安定させるだけでも巨額の資金が必要であり、生産能力を上げるにはさらに多くの資金が必要となります。

にもかかわらず、信じられないことに、恐怖心から大型で長期の重要な石油・ガスプロジェクトに対する投資が依然縮小しています。そして、過度に短期的な需要要因に議論が集中していることも、現在の状況の改善には繋がっていません。強い経済的逆風にも関わらず、世界の石油需要は現在も非常に堅調なのです。

しかし、世界経済が回復すれば、需要はさらに回復し、僅かな石油生産余力すらなくなってしまうことが予想されます。そして、世界がこれら盲点に気づく頃には、軌道修正は手遅れとなっているかもしれません。

だからこそ、私は深く憂慮しているのです。

明確に申し上げたいのは、私たちは、今ある危機を理由に世界の気候目標を変えるべきだと言っているのではないということです。

私たちは皆、気候保護に利害関係をもっています。また、在来型エネルギー源への投資が、代替エネルギー源や技術の軽視を意味するわけではありません。しかし、現在の危機に対して、世界ははるかに優れた対応を取るべきなのです。

今こそ、石油・ガスへの投資、特に生産能力を強化すべきです。少なくともこの危機を通して、人々はより信頼性の高いエネルギー移行計画が必要であることを確信するに至りました。

そして、そのためには、強固かつ長期的な戦略の3本柱に基づいた、新しいグローバルなエネルギー・コンセンサスが必要だと私は考えています。

  • 政策当局者やその他のステークホルダーが、十分かつ安価な在来型エネルギーの供給が長期的に必要であると認識すること。
  • 在来型エネルギーのCO2排出量のさらなる削減と、エネルギー利用の一層の効率化、その両方を可能にする技術。
  • そして、実績のある在来型エネルギー源を着実に補完する、新しく、CO2排出量がより少ないエネルギーです。

アラムコは、この3つすべてに取り組んでいます。

私たちは、2027年までに石油生産能力を日量1,300万バレルに増強することに取り組んでいます。また、ガス生産量も増やしており、在来型ガスと非在来型ガスの組み合わせにより、2030年までに生産量を現在の1.5倍以上に増やす可能性があります。

同時に、上流事業の炭素強度、ガスのフレアリング、メタン強度の低減に尽力しており、すでに世界でも最も低いレベルにあります。また、持続可能な未来に不可欠なCCUSをはじめとする主要な実現技術を推進するための取り組みも強化しています。

一方、化学品は、石油の非燃焼用途の実例であり、当社のポートフォリオの中でより大きく、より戦略的な役割を担うことになるでしょう。

重要なことに、私たちはブルー水素やブルーアンモニア、再生可能エネルギー、合成液体燃料など、新しい低炭素エネルギーを着実にポートフォリオに追加しています。これは、実用的で安定した、包括的なエネルギー移行の一翼を担うための私たちの計画であり、他企業もそのような計画を必要としていることでしょう。

しかし、世界規模の巨大な既存エネルギーシステムを変革し、すべての人に安全で持続可能な未来を提供することは、実に大変な仕事です。そのため、世界のエネルギー・エコシステム全体とそのステークホルダーは、「インダストリー・プラス」のチームとして活動する必要があります。

私たちは、3本の柱にわたる成功を生み出すために、協力しながら前例のない規模とスピードでイノベーションと価値を推進しなければなりません。私の考えでは、第4次産業革命の技術は、そのようなパートナーシップ、特に石油・ガス産業の産業の急速なデジタル変革に直結しています。なぜなら、今、適切なデジタル投資を行うことは、今後数十年にわたって、より高い効率性、より低いコスト、より少ないエミッション、より高い安定性、そしてより高い利益を実現するうえで後押しとなりえるからです。

例えば、アラムコでは、機械学習技術を導入して、安全上の危険の予測と防止、エミッションの監視、故障の回避、エネルギー使用の最適化、潜在的なサイバー脅威の予測を行っています。これらのAIを搭載したシステムによって、私たちは時間とコストを削減し、ひいては、お客さまにエネルギーを安定的に供給する機能を強化しています。

しかし、私たちはさらに上を目指し、ネットワークとして機能することで、より強固な組織になります。だからこそ、アラムコとシュルンベルジェによる、スマート・サステナビリティ・プラットフォームへの取り組みを発表できることを誇りに思います。このプラットフォームは、数多くのデジタル・ソリューションの実用化、およびネットゼロという私たちの大志実現への貢献が期待されます。

これは、1941年までさかのぼる私たちの共通の歴史における最新の章です。そして、この取り組みが、類似のプロジェクトを鼓舞し、私たちの業界および世界の明るい未来へとつながるようにと願っています。

皆さん、エネルギー危機による苦しみが残念ながら深刻化する中、世界中の人々が助けを求めています。政策当局者とすべてのステークホルダーが提供できる最善の援助は、よりはるかに確実な新移行計画を中心に世界を団結させ、今朝私がご説明した三本の戦略的支柱を進展させることであると思います。

新しい計画が完璧であることはないでしょう。人生において、完璧なものなどないのです。

しかし、そうであるからこそ、私たちは、石油・ガス産業を中心に据え、より安全でよりサステナブルなエネルギーの未来の実現に向け尽力するのです。そうすることで、人々の苦しみを和らげることができるのです。

それらを経て春はまた訪れてくれることでしょう。

ご清聴に感謝します。

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