
原油からの化学品直接製造
アラムコは、グループ会社SABICと共同で、画期的な「原油からの化学品直接製造(C2C)」技術の実用化に取り組み、世界の石油化学産業で際立った存在となりました。
当社のC2C(原油からの化学品直接製造)技術により、いくつかの従来型製造プロセスを除去または合理化を目指すことで、コスト競争力のある化学品を製造し、同時に、石油の使用に伴う二酸化炭素排出量を削減します。
化学の世界に身を置かない方々には、このプログラムの目的、つまり「原油を化学品に直接かつ最適に変換すること」が比較的単純なものに聞こえるでしょう。しかし、化学エンジニアや化学者は、この一見簡単な提案の裏にある現実を知っています。そして、ダーランのR&D(研究開発)センターでは、科学者たちが新たな分野を開拓しよう決意しています。
研究ハブ
ダーラン本社の広大な研究施設であるR&Dセンターでは、科学者たちが忙しく働いています。燃料技術の研究に明け暮れる人達もいれば、将来の内燃機関の最適化に没頭する人達もいます。
ホワイトボードが複雑な数式で埋め尽くされます。私たちの最も優秀な頭脳の内なる考えの表れです。研究課題は持続可能性から中流、下流事業まで多岐にわたり、ここでは技術が急速に進化します。
当社のC2C目標達成に向けて、多くの共同事業や企業買収、ジョイントベンチャーが進行しています。それと並行し、R&Dセンターでは野心的な技術戦略が本格化しています。

サウジアラビア、ダーラン本社にあるR&D(研究開発)センター
私たちは、原油の組成や化学品への変換の仕組みを解明し、新たな境地を開拓しています。
現状のプロセス
原油は通常製油所で精製され、ナフサや灯油、ガスオイル、高沸点残渣など、様々な留分に変換されます。
こうした分留製品の一部は、従来型の石油化学原料として使用されますが、これには多額のコストを伴います。規模が大きく、高コストで、エネルギーを大量消費する精製ステップを必要とするためです。
このプロセスを改善するための一つのアプローチは、現状の精製プロセスを最適に統合し、バレル当たりの化学品生産量を増やすことです。これには、統合精製施設で用いられている各技術やプロセスを調整し、原油1バレルあたりの化学品生産レベルを通常の8%~12%から、最大5割へ引き上げることが求められます。
アラムコとSABICの原油からの化学品直接製造に関する提携は、このアプローチの好例です。しかし、仮により少ないプロセスで、生産量をより増やすことができるとしたらどうでしょうか。

C2C技術の一つに使用される試験プラントの圧力調整バルブを点検する科学者 カリームディン M. サイーク
この謎を解明するため、当社のエンジニアや科学者達は、原油の化学品への変換について熱と触媒の経路に焦点をあてた研究を行い、複数の研究戦略と技術を追及しています。各研究トラックは、それぞれが特殊で複雑な手順を踏んでおり、開発段階が異なります。
成功のためのパートナーシップ
進行中の研究トラックで最も先進的なのは、加熱原油からの化学品直接製造(TC2CTM)プログラムです。
アラムコは、アメリカの大手テクノロジー企業CB&I(現在のMcDermott)、および、シェブロン・ルムス・グローバル(CLG)と共同開発契約を締結し、この技術の開発・実証をさらに加速させました。
この提携により、商業化に向けこの技術は大幅にに加速されることとなります。当社のチームは、より大規模な実証実験をCLGのリッチモンド・テクノロジーセンターで行う作業を進めています。

C2C研究所で作業にあたる技術者デュハイマン U. ヤミ。加熱原油からの化学品直接製造研究トラックの原油コンディショニングステップ試験プラントにある湿試験ガス計をモニターする。
C2Cチームにとって、このプログラムを成功へ導く不可欠な二つの要素があります。それは内部のサポートと国際的なパートナーシップです。社内のパートナーシップ、特に化学品事業部門との連携は、非常に重要です。彼らとの技術、工学、経済の面での連携が、プロジェクトが進むにつれ重要になります。
国際的なパートナーシップも重要です。他の施設や知識を活用することで、タイムラインを短縮し、作業を最適化できます。さらに、将来的に私たちのビジネスを強化する関係の構築にもつながります。
最適な触媒を追及
異なったC2Cの研究トラックを結び付ける共通するテーマは、触媒の探求です。触媒こそがすべてを可能とする万能薬なのです。
触媒の目的は、炭化水素に混合し化学品製造に必要な化学反応を引き起こすことで、R&Dセンターで行われている研究の中核をなしています。

オラ アリは、KAUSTの研究チームと共に、原油を化学品にワンステップで変換できる触媒の開発に取り組んでいます。
C2C研究トラックの中で最も野心的なものは、キング・アブダッラー科学技術大学(KAUST)と共同して進められてます。アラムコの科学者オラ アリは、KAUST内の当社研究センターに籍を置き、C2C研究の聖杯(究極の目標)である、あらゆるタイプの原油をたった一つのステップでアップグレードして化学品に直接変換できる触媒プロセスの開発に取り組んでいます。
力強く前進
このプロジェクトの進捗状況を測るには、C2C分野でアラムコが取得した特許数の増加が参考となります。
最先端の研究を推し進め、パートナーとの協働を続ける中で、チームのメンバーが共有するのは、未来への共通したビジョンです。そして、他の研究トラックも最終段階に近づいていると確信し、ワンステップでの直接変換への道のりで、数々の重要な発見やブレークスルーが起きることをと思い描いています。
